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Tokyo, 2000.5
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Stanley George Bodman
translation by Shino Kobayashi

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パンク/ニューウェイヴの流れの中から登場し、高度な音楽性と英国人気質全開のヒネクレ加減で、後続のアーティストに大きな影響を与えたXTCは、メンバーがアンディ・パートリッジとコリン・モールディングの2人となった現在も、ハイ・クオリティ・ポップのブランドとして世界中のマニアックなファンから愛され続けている。XTCの核は議論の余地なくアンディだが、僕はずっと、その影で地味ながら素晴らしい曲を提供し続けているコリンのファンで、(過去のXTC取材には常にアンディしか出て来なかったこともあり)いつかコリンだけのインタビュー環境で「もう1人のXTC」の話を聞いてみたいと考えていた。そして、2000年5月、アルバム『ワスプ・スター』リリースに伴って彼らがプロモーション来日した際、ギター誌がアンディ単体のインタビューを行なう隙にまんまとコリンを連れ出し、念願の単独取材に成功した。とにかくシャイで謙虚な人なので、インタビュー現場では本音を引きだすために色々とおだてまくり、持ち上げまくってみたのだが、さて、その結果はいかに?

「アンディって、なんか好意の表現方法が間違ってる感じがあるよね(笑)」

今回はアンディ抜きで、あなた自身の視点からXTCについて語っていただければと思っています。

Colin:うん、色々と細かいところまで遠慮なく訊いてみてよ。喜んで答えるからさ。

わかりました。じゃあ一番最初に、あなたの音楽的なルーツについて知りたいんですが、あなたがXTCを始める前に好きだったバンドとかレコードとかには、どんなものがあるか教えてください。

Colin:それってベース・プレイヤーとして? もしくはソングライティングに関して好きだったもの? どっちから答えればいいのかな?

ではまず、ベース・プレイヤーとしての方から。

Colin:わかった。僕のベース・プレイヤーとしてのルーツはまず最初にポール・マッカートニー。これは絶対だね。それからフリーのベーシストだったアンディ・フレイザーっていう人。彼からは多大な影響を受けたね。彼のベース・サウンドはまるでゴムみたいに弾力があるって感じてた。うん、マッカートニーとアンディ・フレイザーからの影響が最も大きいんだろうと思う。そして2人から1人を選べと言われたら、アンディ・フレイザーからの影響が一番大きいんだ。アンディのベースは独立してメロディを奏でると共に、曲全体を融合させるボンドみたいな役割を同時にこなしていたからね。

なるほど。あなたの弾くベースも、決して曲のポップさを崩さずに、ちょっと普通ではないものになっていますが、このベースラインはどういう風にして作るのでしょう?

Colin:最初に、そして何よりも大事なのは、曲に貢献して曲を引き立てるベースラインを書くってこと。ベーシストにとって何より重要なのは、自身のベストを尽くして曲を完成形に導くラインを奏でることなんだ。これは絶対的にやらなきゃならないことで、これを忘れてしまうと、自分1人のサーカスみたいになってしまう。つまり、自己満足のジャグリング・パーティしか出来ない状態になってしまうんだ。だからこそ常に曲そのものの事を念頭に入れてなきゃならない。僕はその事について非常にセンシティヴなんだと思う。僕は自分自身で曲を書くから良く解るんだけど、他の人の曲の中でベースが引き立て役に徹してないのを見ると非常にイライラしてしまう。それってすぐに分かってしまうんだよね。だからこそ僕は自分で曲を作る時はあくまでも曲に沿ったベースラインを書くようにしてるんだ。

それでは次に、ソングライティングの部分で特に好きだったアーティストとか影響を受けたアーティストは誰ですか?

Colin:まず最初にキンクスのレイ・デイヴィス。僕の父親が彼のレコードをよく聴いていて、それで僕も彼の事を知るようになったんだ。60年代にはラジオのチャートは良く聴いていたけど、まだ自分でレコードを買うほど大人じゃなかったから両親が買ってくるレコードばかり聴いていたんだよ。僕の父はキンクスが大好きで彼らのアルバムを良く聴いていた。そして僕もレイ・デイヴィスが歌う日常の些細な出来事にはすごく共感できたんだ。彼の書くそういった世界こそが、抽象的な考え方や大きな問題を書いた曲よりも人々を魅きつける要因だったんだと思う。だって誰もが同じような事を考えながら生きているんだからね。パーソナルな視点で曲を書く方がいいと思うし、レイ・デイヴィスはまさにそれをやった人で、非常に些細でノーマルな事ばかりを曲にしていた。だからこそ僕は彼の曲に親近感を感じるんだ。

あと、ブラック・サバスみたいなヘヴィ・ロックも聴いていたっていう話ですが?

Colin:ハハハハハ。いや、影響は受けてないけどね。でも最初にベースを持って音楽を作るようになる時って誰でもヘヴィでガンガン鳴るようなリフをギターやベースで弾きたがるよね? 最初にギターを練習する時もブルージーでガンガン来るギターから習い始めるものだろ? 今の時代だったら例えばニルヴァーナとかさ。だから特にブラック・サバスである必要もなかったんだけど、彼らの曲はそういったギターリフが満載だったしね。すごく魅力的なギターリフがいっぱいだったんだよ。うん、ブラック・サバスやディープ・パープルといったバンドが好きだった理由はそういうところにあるんだ。その頃は楽器の練習を始めたばかりで、彼らの曲はすごくシンプルで練習しやすかったっていうのもある。そのまますぐプレイできるからこそブラック・サバスやディープ・パープルが好きだったんだよ。若い男の子で“スモーク・オン・ザ・ウォーター”を弾いてない子はいないだろ?

(笑)確かに。それではですね、XTCの過去のシングルを振り返ってみると、“ライフ・ビギンズ・アット・ザ・ホップ”とか“ジェネラルズ・アンド・メイジャーズ”とか“ワンダーランド”とか“グラス”とか、あなたの書いた名曲がたくさんあるんですが、自分の曲がシングルに選ばれた時っていうのは、やっぱり嬉しいんでしょうか?

Colin:僕はベーシストではあるけれど、常にメロディに魅力を感じていて、ベースでメロディを弾くのも大好きなんだ。僕はそういうメロディ重視の人間で、僕の書くメロディックな曲はシングル・カットしやすいみたいなんだよね。君が今あげたような曲がシングルになったのはある意味で非常にラッキーなことだったと言える。レコード会社はバンドの成功を心から望んでいて、そのバンドの中で最もコマーシャルに聴こえる曲をシングルに選んでいくもんなんだ。そういうわけで初期のシングルのほとんどが僕の曲だったんだと思う。だけどさ……別にシングル・カットされたくなかったっていう意味じゃないんだけど……シングルになった僕の初期の曲を分析してみると、どれも強く印象に残るメロディを持っていて、それについては誇りに思う一方で、歌詞に関してはそれほど良くないって気がするんだよね。ありがちなポップソングみたいな感じだし……あ、“メイキング・プランズ・フォー・ナイジェル”以外はね。あの曲は非常に完結された曲だと思うから。

その“メイキング・プランズ・フォー・ナイジェル”は、XTCとしての初めてのヒット・シングルになったわけですけども、それが自分の作品だったことには少し自尊心をくすぐられたんじゃないですか?

Colin:あの曲を書くまでは自分の事をソングライターだと認識した事がなかったんだ。それまではほとんどの曲をアンディが書いていたし……あ、それは今現在でもそうだけど……でも僕もライティングに関して『これが自分なんだ』っていう確信や自分の居場所が欲しかったんだよね。自分に自信を持ちたかったというか……。そして“メイキング・プランズ・フォー・ナイジェル”という曲はXTCに世間の注目を集めさせた曲になったし、同時にバンドとして新たなスタートを切ることが出来た作品でもあるんだ。あの曲が出るまでは、僕達はアート指向のパンクでシリアスな曲は作れないバンドだと思われていたからね。ここでいう『シリアス』っていうのは真面目って意味じゃなくて、まともなポップソングっていう意味なんだけど。うん、やっぱりあの曲はバンドにとっても重要なターニングポイントであり、僕自身にとっても大きなターニングポイントだったなぁ。

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