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Tokyo, 2004.8.9
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Kyoko Fukuda
translation by Satomi Kataoka
thanks to Hidetomo Hirayama


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 サマーソニック2004で初めて日本のオーディエンスの前に姿を表したザ・フェイント。そのステージ・パフォーマンスは、予想を遥かに大きく上回る強烈なものだった。エレクトロニック・サウンドを駆使し、ディスコ・ビートを取り入れていることから、ついつい他の80'Sリバイバル勢と同列に考えてしまいがちだが、オマハはサドルクリーク所属というアイデンティティを持つ彼らは、芯の部分にアメリカン・インディー・パンクのタフさをがっちりと持ち合わせている。すなわちライヴこそが最大限に本領を発揮する場所なのだ。従って、以下のインタビューでトッド自身も語っているように、リハーサル直後だったサマーソニックでのライヴの後、さらに各地でツアーを重ねてから改めて実現する単独再来日公演がもっともっと凄いものになることは間違いない。必見であります!

「幅の広さって大事だと思う。どの曲もおんなじタイプ、っていうのは嫌なんだよ。いろんなタイプが共存しててメリハリがある方が面白いと思うんだ」

まずは、サマーソニック2004に参加する形で初来日公演が実現した感想を聞かせてください。

Todd:このような大きなフェスに参加して、日本で初めて自分たちのパフォーマンスを見てもらうことができて、最高のイントロダクションになったと思うし、とても嬉しく思っているよ。

僕も昨日のステージは観させてもらったんですが、お世辞抜きで、あの日の出演者の中でもベスト・アクトだと思いました。

Todd:えへへへ。

で、後方に設置された2枚のスクリーンに映し出される映像が非常に印象的だったのですが、あれはどのようにして作られたのでしょう?

Todd:ライヴで映像を使う試みには、2年くらい前から取り組み始めたんだ。今もヴィデオの作り方を勉強してる最中で、まだまだ初心者の段階だけど、ヴィジュアル・アートを取り入れるのは以前からずっと好きだったし、CDのジャケットも含めて、ヴィジュアル面 の創作も全て自分たちでやってるよ。このまま現在の方向性でどんどんやっていくつもりだ。将来的には、単に音楽を作って、それに映像をつけるというのではなく、音楽と映像をより融合させて、ひとつの作品として表現したい。

映像の内容が歌詞と見事にシンクロしていましたよね。あれは、具体的にはどうやって同期させているのでしょうか?

Todd:ドラマーが、ヘッドフォンから聞こえてくるクリック音に合わせてドラムを叩くと、ドラマーとハード・ドライヴの映像システムの間で、通信できる仕組みになってるんだ。そのシステムには、互いに1フレームと違わずシンクロし合ってる2セットの映像が入ってて、“シンプティ”っていうタイム・コードでタイミングをとっている。

昨日のショウでは、ニュー・アルバム『ウェット・フロム・バース』からのナンバーもたくさん演奏していましたが、これらの曲を組み込んだセットリストは、あなた方にとっても新しいものだったのではないですか?

Todd:うん、まさにピカピカの新メニュー。実際に新作からの曲を演奏するのは日本でのショウが初めてだったんだ。実はつい先週になって練習したばかりなんだよ(笑)。久しぶりに新しい曲をライヴでプレイできたのはすごく嬉しかったね。

そうだったんですか。では、日本のオーディエンスが世界で最も早く新曲をライヴで体験できたわけですね。どれも充分に良かったと思ったのですが、自分たち自身としては、新しいマテリアルを演奏してみた手応えはいかがでしたか?

Todd:うまくいったんじゃないかな。まあ今回は、まだ演奏してる間は手探り状態って感じだったけど、これからツアーが続いていく中で、ライヴで実際に演奏する回数が増えれば増えるほど、曲の仕組みとか展開にも馴染んでくるだろうし、もっとマシなサウンドが出せるようになるはずだ。だから、初披露としてはまあ悪くない出来だったけど、これからもっとよくなっていくと思うよ。

前作の曲をやってた時のツアーと、今回の新しいセットによるツアーとで、大きく変わった点というと何だと思いますか?

Todd:んー……バンドにとっての一番の違いは、気に入ってない曲を演奏しなくて済むようになったってことかな(苦笑)。セットを埋めるために入れざるをえなかった曲っていうのが、今まではあったんだよね。そういう古い曲の幾つかを演奏しなくてもよくなったっていうのは、やっぱ嬉しいことだよ。長い間どのショウでも演ってきて……そう、ここ3〜4年ずっと同じ曲ばかりやってきたから、やっと入れ替えができて喜んでいるんだ。

さて、ニュー・アルバムについてなんですが、タイトルは最終曲“バース”の歌詞からきているんですよね? 自分自身の生誕について歌っているこの曲のアイディアはどういうところから出てきたのでしょうか?

Todd:前作の『ダンセ・マカブレ』を完成させてから、かなり時間が空いたわけだけど、新譜の制作に入る前に、バックパックだけでタイに1ヵ月ほど1人で滞在したんだ。どこか旅していろんなことをじっくり時間をかけて考えたいって思ってね。で、結局名前も知らないようなちっぽけな島、南国のパラダイスというか……僕の他には、ドイツ人がひとりとコックだけしかいないようなシチュエーションにたどり着いたんだよ。そこで“バース”の詩を書いたんだ。前のアルバムでは“死”をテーマに、その前の『Blank-Wave Arcade』では“セックス”をテーマにして歌詞を書いたから、今度は“生”について書くのが自然な流れだと考えたんだ。前作を作った後、次にはバンドとしての新しい始まりというか、また違ったタイプの曲を書きたいと感じていたんだよね。だから、誕生のプロセスで何が起きているか、もし自分で解かるとしたら、生まれてくる時、この世に送り出される時、どんなふうに感じるだろうっていうのを描写するのは、すごく理にかなったことだと思えたんだよ。

なるほど。実際に新作の歌詞は、前作に比べて非常にストレートな表現になっているように感じました。流行のポップスを攻撃していたり、世の中にあふれているポップ・カルチャーはくだらないものだと主張していたり、テレビによる消費の押し付け・洗脳に抵抗したり、という風に、個人的にはメッセージ性が強くなっているようにも思えたのですが?

Todd:……んー……多分ね、うん。そう思うよ。作った時はそんなふうには考えてなかったけど、確かに“パラノイアタック”なんかでは、そういったことが曲作りのインスピレーションをもらうきっかけになっていたりする。あんまりネガティヴになりすぎないように注意してるんだけど、僕の考えてることを曲の中で示すことで、みんなにそれを理解してもらいたい、僕の考えてることをみんなにも考えてみてもらいたい、っていう思いはあったからね。

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