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by telephone, 2008. 8. 21
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Stanley George Bodman

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80年代末以来の活況を呈しているシアトル・シーンでも最も注目すべきバンドのひとつ、ディーズ・アームズ・アー・スネイクスが待望のサード・アルバム『テイル・スワロウワー・アンド・ダヴ』を完成させた。本国では、兄弟バンド的な関係性にあるマイナス・ザ・ベアを成功させた地元のレーベル=スーサイド・スクイーズに移籍、満を持してのリリースとなる。さっそく、サウンド面のリーダーであるベースのブライアンに電話をかけ、話を聞いてみた。

「ほどよく写実的でありながら、あえてそれをグチャグチャに解体することができるセンス、それこそまさに俺自身が常に求めていることだ」

今回からジェイド・トゥリーを離れて、スーサイド・スクイーズへ移籍しましたよね?

Brian:まぁ正直あんまり公で語るべき話じゃないのかもしれないけど、要するにジェイド・トゥリーからは全く音信がなくなってしまったんだ。俺達は次のアルバム製作に向けて曲作りも終えて、いざレコーディングだってなった時、スタジオを押さえる期間や予算について話を進めようとしたら、「ちょっと検討して、こちらから折り返し連絡する」って言われて、結局その返事は未だに無いままなんだよ。当初は去年の12月にはレコーディングを始める予定だったんだけど、そんな感じで……今でも彼らがレーベルとして機能してるのか、実は俺もよく知らないんだ。最近あんまり新しいバンドをリリースしたって情報も聞かないし……。とにかく、俺達はあのレーベルを離れようって決めて、以前から友人だったスーサイド・スクイーズに相談を持ちかけたら、あとはもう、とんとん拍子でまとまって、今じゃ俺達としてもすごくハッピーな状態にいるよ。

スーサイド・スクイーズというと、やはりマイナス・ザ・ベアが思い浮かびます。もともと同じバンド(ボッチ)をやっていたメンバーが今ではぞれぞれに違ったメンバーと出会い、全く違った音楽をやっているわけですが、それでも2つのバンドに共通してある精神性のようなものがあるとしたら、どんなことでしょう?

Brian:どうだろうなぁ……お互いに一緒のバンドでプレイしたメンバーも居るし、お互い凄くハードにツアーを廻るバンドだし……とにかく凄く仲がいいバンドなんだよ。同じシアトル出身だし、バンド以外でも一緒に呑みに行ったりするし、サポートしてくれるファンも、両方のバンドをサポートしてくれているしね。とにかくマイナス・ザ・ベアはクールなバンドだよ。

さて、前作からドラマーのクリス・コモンがエンジニア/プロデューサーとしても活躍し、バンドだけでじっくりレコーディングに取り組める体制が確立されましたが、今回はさらにそれがうまく運んだのではないかと想像します。引き続きクリスが経営に携わるレッド・ルーム・スタジオで作業を進めたそうですが、実際に今作の録音がどのように進められたか、これまでとどんな違いがあったか、あるいは特に意識して試みたことなどを、エピソードも交えて教えてください。

Brian:前作『イースター』からクリスがエンジニアリングを担当してくれて、レッド・ルーム・スタジオも好きなだけ使えたし、レコーディングに十分な時間をかけられたんで、全員が納得するまで録音作業を続けることができた。ただ、今回は前作での反省を踏まえて、あえてあまり時間をかけずに、もっと生々しい作品にしようとしたんだ。ほとんどのプレイを2〜3テイクで済ませて、完璧なプレイよりもむしろ生々しい空間を捉えることに重点を置いたレコーディングになったね。前作との決定的な違いはそういう部分かな。

なるほど。りなみにクリスはエンジニアとしてだけでなく、ドラマーとしてもバンドの音楽をひっぱっていることが分かります。2曲目"Prince Squid"などはイントロからドラムが煽りまくるナンバーですし。ベーシストとして、さらにソングライターとして、彼のプレイからどのような刺激を受けますか?

Brian:俺達には特に決まった作曲方法があるわけじゃなくて、大体は誰かがちょっとしたアイデアを持ってきたり、セッションしている時に偶然出てきた誰かの突拍子も無いプレイを元に、みんなで膨らませていく事が多いんだけど、まさしく"Prince Squid"はクリスがたまたま叩いたドラム・フレーズがめちゃくちゃカッコよくて、「ちょっと、今のやつを曲にしちゃおうぜ!」って言って、完成させた曲だったんだ。だから、彼に限らず、メンバー全員から常に刺激を受けているよ。

確かに、あなたは前回来日時のインタビューで「曲の出来方には色々なパターンがあり得る」と言っていましたね。例えば今作のリード・トラックとなる3曲目"Red Line Season"などは、どんな風にして出来上がっていったのでしょうか?

Brian:あれはとても変な感じで出来たんだ……あの曲では俺がギターを弾いて、ライアンはキーボードを弾いているんだけど、基本的には俺が考えてあった幾つかのギター・リフを元に組み合わせていって、みんなで試行錯誤しているうちに全く予想もしてなかった形に仕上がったんだけど、それこそがバンドをやってる醍醐味だから、仕上がりは非常に気に入っているよ。

あなたがステージでキーボードも兼任するようになってかなり経ちますが、違う楽器に慣れてきた分、新曲にはキーボードとかサンプラーのアイデアから発展していった曲などもあるのではないですか?

Brian:"Lucifer"は、キーボードから作ったナンバーだね。あれは、レコーディングに入る直前に出来た曲で、以前にキーボードを弾きながら思いついてたフレーズが2つあったんだけど、奇跡的にその2つのフレーズが上手いことくっついてくれたんだよ。そこからバンド全員で曲に仕上げたのさ。すごく短時間で完成させることができてよかったよ。

ところで、あなたのプレイヤーとしてのルーツやキャリアを前回の取材では訊けなかったので、今回、簡単に確認させてください。ベースをメインの楽器に選んだ理由と、ボッチのような複雑な楽曲をプレイするに至るまで、どのようにして奏法を学んでいったのか、さらには独自のエフェクター類の使い方などはいかにして開拓していったのかなど、あなたのテクニカル面での背景や信条などと合わせて教えてもらえますか?

Brian:初めてベースを弾いたのは14歳の時だったかな。9歳くらいから音楽に興味を持ち始めたんだけど、14歳くらいになってから周りの友達の影響で本格的にパンクとかハードコアを聞くようになって、必然的に楽器を弾きたくなったんだ。ただし、それまでは楽器を触れたことが一切なかったから、まずは一番ベースが簡単だろうってことで。しかも俺は左利きだから、左利き用のギターを探すのも面倒だったし、ベースなら右利き用でもそんなに困ることないやと思ってね。ギターみたいにコードを押さえなくて済むからさ(苦笑)。それからは、毎日ひたすら練習したね。若いうちは誰でも難しいプレイを弾きたがるものだし、いちいちテクニカルなプレイをしようと自分を追い込んでいたけれど、今はもう少し歳をとって、いかに効率よく効果的なプレイするかって方向に興味が切り替わったんだ(笑)。

ちなみに、音楽に向き合うにあたって最も刺激になったベーシストは誰でしょう?

Brian:たぶん、最も影響を受けたのはマイク・ワットからだね。彼はバンドの中でもコンポーザー的な立ち居地にいたし……何よりベースという楽器は、基本的にはローを支えてリズムのアクセントを担う役割としてほとんどの人が認知してると思うんだけど、マイクの弾くベースは間違いなく他の楽器と変わらない、もしくはそれ以上のインパクトを与えていたと思う。それも、決してオーバーアクションで目立とうとするような、ロックスター的な感じじゃなくね。そこにすごく惹かれたんだ。


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