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NAHTも、バーニング・エアラインズも、ここにきてメンバーが増えたわけなんですけれども、なにか今サウンド的に求めているもの――より追求していきたいものっていうのが、2つのバンドでシンクロしているようなところがあるんですかね? それゆえにギターを増やしてサウンドの幅を広げようとか凝ったものにしようとか、そういった流れに2つのバンドの間の共通点を感じたりはしますか?

Peter:うん、たぶんね。

Seiki:バイオリンのヤスコがNAHTと一緒にプレイすることになった時には、もうギターは正直いらないかなって思ってたんだけど、セカンド・アルバムをレコーディングした時に、もしかしたらもう一本ギターがあった方が自分のストレスがなくなるのかなって思った記憶があるんですよ。Jが考えているヴィジョンと僕が考えているヴィジョンがシンクロしてるかどうか僕は判らないけど……。単純に音が1つ増えることによって表現の幅が広がるし、例えばもっといいメロディをつけたいと思ったら、気張って高い音を出そうとするしそれと同じ理由で今はそれを楽しもうとしてるし、これからもそういう方向に行こうと思ってます。

さっきバーニング・エアラインズに対してしたのと同じ質問になっちゃうんですけど、ジョージさんが入ったことで、創作面で新たな刺激を今すごく受けているっていう状況にあったりしますか?

Seiki:ああ、それはもう俄然ありますよ。プレイ的なこともそうなんだけど、彼の持っているキャラクターであり、彼が存在してることによって自分が救われることを今回のツアーでも何回も経験したし。うん、ストレスは確実に減ってると思う。

今の発言も、シェルターのMCで話していた『バンドとは会話だ』っていう話に通じるところがあるんでしょうかね?

Seiki:うん、それとも関係してきますけど、やっぱグループである以上、呼吸だと思うんですね。日本に“阿吽の呼吸”っていう諺があるけど、皆まで伝えなくても返してくれる呼吸のやり取りっていうのはすごく大事だなって改めて思いました。今んところ僕たちは、まだまだバーニング・エアラインズほどその呼吸ができていないと思うし……たぶんこれからもっともっと絆を深めていくことが大切だと思うけれど、今回のツアーはその始まりとして確実にNAHTにも得るものがあったし、良い経験だった。

バーニング・エアラインズの呼吸のレベルの高さっていうのは、具体的にはどういうところから感じた事だったんでしょう?

Seiki:うーんとね、移動中の車内で、ちょっとしたジョークを誰かが言ったとしたら、それを誰かが拾い合ったり、ただふざけ合ってるような時にも、なんていうか、誰かが何か言ったらその後にっていうリズムがあるんですね、会話の中に。それを見た時に、これってバンドのサウンドに似てるなって思ったんですよ。

J:いつもゲームをやってるんだよ。

Ben:アハハ。

J:そういう能力は日本に来ることによって培われたような気がするな。こうやって日本に来れて、君たちとツアー出来たことは本当にラッキーだと思ってる。しかもこれが2度目だし。意識的にこういうコミュニケーションを取っているわけじゃないんだよ。ただ単に皆すごくエキサイトしてるんだ。それがベストなエッセンスを引き出してくれているんだと思う。バンドをやってる本来の意味――つまり、楽しむこと、そして生きること――その事を再び認識させてくれるんだ。

なるほど、わかりました。では、ちょっと話が飛んでしまいますが、ブライアン・イーノのセカンド・ソロ・アルバム『Taking Tiger Mountain』の中に“Burning Airlines Give You So Much More”っていうタイトルの曲が1曲目に入っているんですけど、それは知ってましたよね?

J:うん、そこからバンド名を取ったんだ。

やっぱり。どうしてそこから取ろうって思ったのか訊いてもいいですか?

J:まあ一番の理由は、単純に、皆この言葉の響きが好きってことなんだ(笑)。それから僕はブライアン・イーノが大好きで……とにかく彼のアルバムの大ファンなんだ。マイクも好きだし。う〜ん、ベンは聴いたことないって言うし、ピーターもたいして興味ないみたいだけど、でもまぁ、全体的に見てバンド名としていい響きだなって思ったんだよね。様々な解釈が出来るし……。う〜ん、これ以上は言えないなぁ。あまり言い過ぎるとブライアン・イーノの肩を持つような印象になっちゃうじゃない? 音楽的には全然近くないわけだから……。でも彼からは大きな影響を受けているよ。

イーノの“King's Lead Hat”とかをカヴァーしてみたいって発言してましたよね?

J:ああ、僕はやりたいね。僕個人としてはね。バンドとしてやるかどうかは分からないけど。

ぜひ聴いてみたいので、機会があったらぜひ挑戦してみて下さい。

J:うん、実現するかどうかはまだ分からないけど、いつも頭のどっかにあるんだ。ただ、やるとしてもまだまだ先になるだろうね。

楽しみに待っています。ではここで「パンク」っていうものについて話をしたいのですが、今はパンクっていう言葉がすごく混乱していて、「スタイルとしてのパンク」っていうものと「精神性としてのパンク」っていうものの意味合いがすごく分裂してしまっているような状況にあると思うんですよ。それで、今「パンク」っていう言葉に対して持つイメージっていうのは、皆さんの場合それぞれどういうものかを訊いていきたいんですが。

J:ん〜……誰か答えてくれよ!

Mike:アッハハハ。僕の場合、今となってはパンクって言葉の意味についてそれほど考えなくなったなぁ。でもそれと同時に、パンクは僕の人生の中で大きな部分を占めるものなんだ。音楽スタイルっていうより、考え方の問題だと思う。僕自身、今でもパンク的な思考回路で行動していると思うね。それは個人主義な考え方であり……。

J:これは僕ら4人全員に共通していると思うけど、初めてパンクに出会った時、それぞれが間違いなく大きな衝撃を味わったんだと思う。1人1人の捉え方は違っただろうけどね。僕らが最初にパンク・ロックにハマったのは80年代だけど……パンクを知ることによって、自分の手でバンドを作って自分のやりたい事は何でも出来るっていうライセンスを貰ったような気分になれたんだ。僕にとって……それからマイクも言ってたことだけど、パンクの根本的な意味、そしてその頃に受けた衝撃っていうのは未だに自分の中に残っているし、今でも非常に大事なものなんだ。だけど、21世紀になった今、他の人々がパンクをどのように捉えているかっていうことは全然気にならないね。カルチャーは次々に出ては消えるものだし……。大事なのはアイデアの部分なんだ。

つまり、もう一番最初のアイデンティティというかメンタリティというか、そういうものが自分の中で当たり前のものとして根付いてしまっているから、それをあえて今さら取り出して「パンク」と結びつけて語るまでもないって感覚ですか?

J:ああ。

Mike:まさに、その通りだね。

J:今は同じ話題を別の方法、別のクリエイティヴなやり方で模索していくべきなんだろうな。例えば何か新しいカルチャーの中で同じ精神を模索していくとか。

せっかくなので、ベンとピーターのパンク体験を訊かせてもらえませんか?

Ben:当時の話?

ええ。

Peter:うーん、どうなんだろう? 僕はスケートボードに熱中してたんだ。その頃はブラック・フラッグやらデッド・ケネディーズとかを聴いていた。ラヴァーボーイとかに代わるちょうど良い存在だと思ったからね。とにかくラジオから流れてくるような音楽は大嫌いだった。そういうパンクに出会ったことがきっかけになって、高校の頃に嫌いだった奴らと自分とを区別するようになったのは確かだね。

Ben:ん〜、ピーターに出会ったことが僕にとっての直接的なパンク洗礼になったね。彼がああいうシーンを知るきっかけになってくれたんだ。僕らは同じ大学で音楽を勉強していたんだけど、その頃の僕はクラシック・ギターを学んでいて、茶色のコーデュロイ・パンツにグレイのハンティング・ジャケットを着てるような奴だった。その反対にピーターは全身レザーで固めて、ブロンドのスパンキー・ヘアをしていてさ。だけど、たまたまピーターと話した時に、僕も高校時代にはベースをやってたって話をしたんだ。そしたら、ピーターのやってたダブっていうDCのバンドでベーシストを探してるって話を持ち掛けられて……そのバンドに加入することによってパンクについて色々知るようになったんだ。でもピーターに会えて本当に良かったよ。それ以前はコマーシャルなラジオ局から流れてくる音楽以外はほとんど知らなかったからね。それこそがパンクが僕にもたらしてくれた大きな意味だった。こんなところにこんなに素晴らしいアーティストがいるのかって感動した。さっきJも言ってた通り、自分自身を表現する人を知ることによって、自分もインスパイアされるっていう感覚だった。

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