天空の城

 天馬に誘われ辿り着いた先は天空の城。そこは優雅に暮らす天空の民たちがいた。悠久の時が流れている。彼らは、「奇蹟は待っては決して訪れないが、求めれば必ず訪れる」と教えてくれた。何故か涙がこぼれた。この年でこれほど泣くとは思わなかった。
 純粋理性に呼び覚まされた奇蹟の城。そこには優しい癒しの花が咲き乱れる。天空の民が育てるそれらは世界樹の恵みそのもの。生を享受する分にはそれは必要ないものだろう。まだ涙が流れるのなら、まだ生きていけそうだ。何かが心の中で弾け飛んだ。
 そうして、夜明け前こっそりと地上に戻ったんだ。マスタードラゴンに会わないままに。後悔はなかった。よしっ、精一杯生きてやる。