作用反作用 その4  M-43      No188        201024()

 

0  作用点をグリグリと書こう.

1  力はものにはたらいているということを, 前回書きました. 力はそれが加わっている場所で, そのはらきが異なります.

  力がはたらいている点を作用点といいます.

  ただし, 作用点が作用線上で位置を変えても, 力のはたらきは変わりません. これを, 作用線の定理といいます.

2  机の上に物体が置かれています. この周辺で, はたらいている力を, 描いてみると, 図のようになります. 

  物体には重力がはたらいています. 物体の重心がその作用点です.

  机が物体を上向きに押しています. 物体が机を下向きに押しています. この上向きの力は物体にはたらいているので, 作用点は物体の中に描きます. 下向きの力は, 机にはたらいているので, 作用点は机の中に描きます. 両方とも境界線を少し離して,グリグリとはっきり描くことにします. 境界線上に作用点が描かれる(点が明確でない場合が多い, 点には大きさがないからという言い方があって), どちらの力が,どちらのものに,はたらいているかがわからなくなります.

3  写真は, 昭和45年検定の,理科教科書6年生下巻のものです.

  力の矢印が, ものから分離していて, 作用点も描かれていません.

この上向きの力の矢印は, 何にはたらいていると思いますか. そして, 下向きの力の矢印は,どの物体にはたらいていると思いますか.

  本文はこのようになっています.

 

  “ばねばかりのかぎを引っぱると, 指はばねによって引きもどされるように感じる. その感じは, ばねののびが大きいほど強い. ばねがのびると, ばねにはもとにもどろうとする力(A)が生じ, その力は, のびが大きいほど強い.

  ばねがのびたままで止まっているとき, ばねを下向きに引く力(B), ばねが上向きにちぢまろうとする力(C)とが等しくなっている. 1つの物(S), 大きさが等しく, 向きが反対の2つの力がはたらいていて, その物が止まっているとき, 力がつりあっているという.

 

Q1 さて, (A)(B)(C)の力はそれぞれ何にはたらいているのでしょうか.

Q2 図の上向きの矢印(), 何にはたらいているのでしょうか.

  下向きの力(), 何にはたらいているのでしょうか.

  この二つの力は, どういう関係にあるのでしょうか().

Q3 1つの物(S)とは何でしょう.

 

1: この教科書は啓林館のものですが, 教育出版, 信教, 東京書籍, 学図, 大日本も同じ傾向の図が掲載されています.

2: (A)(B)(C)()()()(S), 後出の(X)(Y)の記号及び Q1, Q2, Q3, の発問は石井が書き加えたものです.

 

蛇足

1  ちなみに答えは

Q1 (A) ばね(のつもり?)

(B) ばね. これは手(又は, おもり)がばねを引く力で, 下向きの力

(C) (A)と同じでばね(のつもり?)

()ものにはたらいているという意識がなくて, 単に, 上向きの力?

()ものにはたらいているという意識がなくて, 単に, 下向きの力?

()大きさが等しいという意識, (2力のつりあいのつもり?)

Q2 ここに登場する<1つの物>S?

 おもりとばねが出てくるので, そのどちらか. 

本文によると

<ばねを下向きに引く力>とあるので,ばね?

<ばねが上向きにちぢまろうとする力>とあるので,おもり?

この力は別のものにはたらいているので,力学的には,つりあいにはなりません.

2 著者には, 力がどのものにはたらいているかという意識がないようです. ばねが持っている力(本文:ばねに力が生じ)と,おもり(あるいは人)が持っている力が,等しくて,つり合っている のです.

  一番初めの表現で, (指が)ばねばかりのかぎを引っぱる(X), 指はばねによって引きもどされる(Y)ように感じる. とありました.

  著者の観念は, おもりがばねを引く力(上向きの矢印X), ばねがおもりを引く力(下向きの矢印Y)が等しくて, つりあっている, と言っているようです. おもりとばねがひっぱりっこをしている図なのです.  

  二人の女生徒が手を握り合って左右から引っぱりっこをしている写真に, 2力がつり合うとどちらにも倒れない>, という説明がついています. 千葉県版「理科の自主学習」という, 1のワークブックのものです.

女生徒同士の引っぱり合いと,おもりとばねの引っぱり合いは,同じ構図なのです. 

3 とはいえ, 小学校の理科で, 力の学習がなされていたことについては,高く評価するものです. 

 私たちは,小学校で力の学習をすることを重要視しています. 

 ではどうすればよいのでしょうか.ここの教材を使うとすれば,

(1) すべてのものに重さがあります.

(2) ものの重さは重心にはたらく力です.

(3) ものをばねに吊るすと, ものには, ばねから上向きの力がはたらきます. 

(4) ものが止まっているときには, この二つの力がつり合っているといいます.

(5) ばねについてもつり合いがいえます.

(6) <ものA>には直に触れている<ものB>から力を受けます. <ものB>は<ものA>から力を受けます.

ものに, どのような力がはたらいているか, 探してみましょう.

(7) 重力は地球がものを引く力です. これは, 直に触れていなくても力がはたらきます. 万有引力といってニュートンがみつけました.

 ざっと,こんなもので如何でしょう.

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力の作用点 図2