Random Diary 2014
*2014.12.28
新生クリムゾン、ライヴ盤とレア音源集をリリース

Live at the Orpheum
ドラマーが3人いる新メンバー(Gavin Harrison / Pat Mastelotto / Bill Rieflin / Mel Collins / Robert Fripp / Jakko Jakszyk / Tony Levin)で今年秋に行われたアメリカ・ツアーのライヴ盤。CD (16/44.1 stereo) + DVD-A (24/96 Hi-Res stereo) の2枚組の他にアナログ盤も同時発売。懐かしの曲多数。21バカ・バンドのように懐メロ・バンドと化したか?
曲目:Walk On: Monk Morph Chamber Music / One More Red Nightmare / Banshee Legs Bell Hassle / The ConstruKction of Light / The Letters / Sailor’s Tale / Starless


Elements Tour Box
こちらはツアー会場で販売されたというレア音源集(2枚組CD + ブックレット)限定盤。未完成の断片が大部分を占めるサンプラーのようではあるが、70年代の未発表音源なども含まれ、スルーしがたい。

*2014.12.21
ウェストコースト・ジャズの秀逸ジャケット3枚

Lennie Niehaus, Vol. 1: The Quintets
部屋にディスプレイしてるLPの一枚。
ニーハウスのシャツから50年代西海岸の雰囲気がそこはかとなく漂う。


The Bill Perkins Octet on Stage
渋い。パシフィック・ジャズのジャケはセンスが良い。

Arranged By Montrose
これもパシフィック・ジャズ。
録音マニアはマイクのセッティングを見るだけで萌える(笑)


*2014.11.14
Renaissance/Illusion - Face of Yesterday

ルネッサンスのセカンド「Illusion」に収録された名曲を、イリュージョンによるリメイク(Out Of The Mist 収録)と聴き比べてみた。
両方とも似たようなアレンジではあるものの、イリュージョン版はオブリガートのギターが入らず、メロトロンが鳴っている。

元々はヤードバーズのキース・レルフとジム・マッカーティが中心となって結成されたルネッサンスは、諸事情からセカンド・アルバム後に別のバンド(アニー・ハズラムがヴォーカル)が名前を引き継いだ。その後は名声を高めて立派に成功。一方、オリジナル・メンバーはキースの死後イリュージョンとして再始動し2枚のアルバムを残すも地味に活動停止。明暗を分けたのは何だったのだろう。音楽性かスター性か、それとも時の運か。
イリュージョンには儚(はかな)げな魅力がある。薄幸なイメージのジェーン・レルフにも…


*2014.10.19
ヒュー・ホッパーの未発表音源集 全10枚

Vol. 1: Memories
Vol. 2: Franglo Band
Vol. 3: North & South
Vol. 4: Four By Hugh By Four
バラで少しずつ出ているようだ。最終的にはボックス化されるのだろうか?

*2014.9.3
Starless (40th Anniversary Box Set)

ナニコレ? 27枚組だと!?

(2014.9.27 追記)
いまだに詳しい情報がつかめない。ウェブ上で見つけたのはHMVだけ。
ミューア脱退後4人編成になった73年から74年春まで、太陽と戦慄 ボックスRed ボックスの間を埋めるライヴ音源を集めたものになるはずだが、確かこの時期はバンド側で正式に録音していなかったのでは? ブートレグのオーディエンス録音を使うのか? 音質的に大丈夫なのか?
あと希望的観測として考えられるのは、アムステルダムの "Larks Part 1" 入り無修正完全版(ハイレゾ、おまけでBBCのアナウンスも付けて)、リハーサル音源、"Dr. Diamond" のスタジオ・デモ(あるのか?)、テレビ出演時の映像… さらにもっとビックリするようなのが出てくるか?

(2014.10.2 追記)
ここに詳細な情報があった!
サウンドボード録音がない73年前半のアメリカ・ツアーは残念ながら未収録で、73年秋以降のUK/ヨーロッパ・ツアーがメイン。アメリカからは唯一10月テキサス・アーリントンをボーナス・ディスクに。1曲のみ収録の6月アトランタは全曲サウンドボード音源があるはずだが…。
既に詐欺師 ボックスで出てたグラスゴーとチューリッヒは待望の完全版でハイレゾ・リマスター。アムステルダムの "Larks 1" はやっぱり無かった(オーディエンス録音も見つからなかった?)が、ラジオ用ミックスが初登場。イタリア、フランス、ドイツは初登場音源がゾロゾロ。ブルーレイにも膨大な情報量… そろそろプレーヤー買わないとな〜
スタジオ未発表音源が無視されたのも残念。収録できるようなのが無かったのか?

(2014.10.16 追記)
様々なおまけ付き日本アセンブル盤も出る。

(2014.11.10 追記)
特集ページを作りました。

*2014.9.13
山下達郎マニアック・ツアー

普段ライヴでやらない曲ばかりで3時間20分(いつものアレはやったが…)。セットリストなど詳しくは書けないが、さりげなく(名前は一切出さず)大滝さんのトリビュートしてたことだけ伝えておく。グッと来た。
来年はベタな曲で全国津々浦々ツアーするらしい。また行こうかな。

*2014.8.23
山下家 Double Fantasy

(久々に)自己満足な選曲で CD-R を作っちゃおうシリーズ。
10年ほど前、達郎とまりやの曲を交互に並べてみようと思いつき、レノン家に倣って「山下家 ダブル・ファンタジー」と洒落てみたもの。マニアック・ツアー観覧を前に引っ張りだしてきた。
ふたりはステディ / DONUT SONG」とか「Winter Lovers / クリスマス・イブ」とか、前後隣り合ってる曲に何らかの関連を持たせたりしつつ、自分が愛聴してる(ややマイナー気味な)曲を集めた。結婚後ということで、RCA時代は除き Moon レーベル以降から選曲している。

1. The Theme From Big Wave(from "Big Wave")
2. PLASTIC LOVE(from "VARIETY")
3. メリー・ゴー・ラウンド(from "MELODIES")
4. ミラクル・ラブ(c/w "マンハッタン・キス")
5. 好・き・好・き Sweet Kiss!(c/w "いつか晴れた日に")
6. ふたりはステディ(from "VARIETY")
7. DONUT SONG(from "COZY")
8. とまどい(from "Bon Appetit!!")
9. さよなら夏の日(from "ARTISAN")
10. ノスタルジア(from "Bon Appetit!!")
11. 寒い夏(from "僕の中の少年")
12. 色・ホワイトブレンド(from "REQUEST")
13. SOUTHBOUND #9(from "COZY")
14. 幸せの探し方(from "Quiet Life")
15. 夏のコラージュ(from "COZY")
16. Winter Lovers(from "Bon Appetit!!")
17. クリスマス・イブ(from "MELODIES")
18. (ボーナス・トラック)竹内まりや山下達郎 - Summer Vacation(from "Sunday Song Book")

<コメント>
1. 映画「Big Wave」は84年か85年の夏、地元のデパートで(タダで)上映したのを見た。ストーリーのない環境ビデオだった。
2. 3. グルーヴ感がスゴイ。日本で最高峰のリズム隊といえよう。
4. 牧瀬里穂への提供曲をセルフ・カヴァー。ありがちなパターンの歌詞だが抗えない。
5. 「Rarities」収録のとはギター・ソロが違うオリジナル・ヴァージョン。こっちの方が好き。
8. 広末涼子への提供曲をセルフ・カヴァー。夏(青春)の終わり感がある。
9. 夏の終わりの定番曲。毎年聴いてるけどいつでも泣ける。
10. 70年代歌謡曲のよう。こういうメロディ作り上手いな〜
11. もろにバカラック。
12. 中山美穂への提供曲をセルフ・カヴァー。開放的な明るさの中にチラッと切なさがにじむ。たまらない。
13. 表向きは典型的な「夏だ海だ達郎だ」みたいだが、実は、楽園願望の裏に潜む、厳しい現実から抜け出せない辛さを暗示している。
14. 一方で、日常の些細な幸福を歌う。オシャレなフランス風に。
15. 幸福な時はほんの一刹那しかない。なぜかプリファブ・スプラウト("Johnny Johnny" あたり)を思わせる。
16. シンデレラ・エクスプレス。どうしても「クリスマス・イブ」を連想させる。
最後の一曲は SSB で放送されたお二人のデュオ。オリジナルは村田和人「MY CREW」に収録。


*2014.7.21
Funkadelic / Parliament

両方ともジョージ・クリントン率いる実質的には同一バンドだが、大ざっぱな音楽性によって(契約上の問題もあり)名義を使い分けていた。

Funkadelic:ギターを前面に出したロック寄りの音、晩年のジミヘンからの影響大、社会的メッセージあり。サンプル ⇒ Cosmic Slop (PV)
Parliament:ホーン隊とコーラスを前面に出したファンク寄りの音、JBとスライからの影響大、ふざけたストーリーあり。サンプル ⇒ Up For The Down Stroke (PV)

80年代初め頃からゴッチャになってきて、P-Funk All Stars と名乗ったり George Clinton 個人名義になったりするも実態はほとんど同じ。周辺人脈も含めると様々な名義のアルバムが存在し、「P-Funk」と総称される一大ファンク帝国を築き上げた。歌詞・コンセプトなど全体のイメージを決めるのはクリントンだが、音楽的には主に Bootsy Collins(ベース・作曲)と Bernie Worrell(キーボード・作曲)が大きな役割を果たしている。

<オススメのアルバム>
FunkadelicMaggot Brain, One Nation Under a Groove
ParliamentMothership Connection, Motor Booty Affair
Live:The Mothership Connection [DVD] (1976), P-Funk Earth Tour (1977)

<個人的に好きな曲>
Funkadelic - You Hit The Nail On The Head
Parliament - Rumpofsteelskin

ザッパ/マザーズに通じる猥雑さもあり
Funkadelic - Jimmy's Got A Little Bit Of Bitch In Him

<激オススメ本>
P-FUNK
これを読んで、ゴチャゴチャしてよく分からなかった実態が掴めるようになった。大容量のディスク・レヴューが圧巻。ただ、次々と登場するメンバーの名前が覚えられない。メンバー参照表か人脈図があればもっと良かった。

*2014.6.28
お買い物報告書(全日本レコード&CDサマー・カーニバル@仙台)

(以下すべて中古LP、合計7,372円)

ギル・エヴァンス/パラボラ(Horo/RVC)2枚組で全5曲
珍しく8人編成、1978年ローマでのスタジオ録音。たぶん未CD化。
20年以上前に手放して後悔していたもの。やっと再会できた。

クインシー・ジョーンズ/バース・オブ・ア・バンド Vol.2(マーキュリー)
1959-60年録音の未発表曲及び別テイク集。アルバム未収シングル含む。
ルロイ・アンダーソンの "シンコペイテッド・クロック" が珍しい。

クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ/ピュア・ジニアス(Elektra/Musician)
1982年に発掘された、ソニー・ロリンズが入った1956年のライヴ。

チャーリー・ヘイデン/クロースネス(Horizon/キング)
デュエット集。お相手は、キース・ジャレット、オーネット・コールマン、アリス・コルトレーン、ポール・モチアン。

ザ・ジャック・モントローズ・セクステット(Pacific jazz/東芝EMI)
ウェスト・コーストのテナー・サックス兼アレンジャー。1955年録音。

アート・ペッパー/ウィンター・ムーン(Galaxy/ビクター)
ウィズ・ストリングスもの。晩年の1980年録音。現行CDとは違うイラスト・ジャケが良い。

Vince Guaraldi Trio - A Charlie Brown Christmas (Fantasy)
スヌーピーのアニメで聞き覚えのある "Christmas Time Is Here" が懐かしい。
有名な "Linus & Lucy" や、ライナスが弾く(?)"エリーゼのために" も入ってる。

矢野顕子/ただいま。(ジャパン・レコード)
"春咲小紅" を収録した81年作。子供の作文に曲を付けたのがあったりする。

松田聖子/Touch Me, Seiko(CBSソニー)
1980-84年発売のシングルB面コレクションだが、中途半端な選曲が残念。
既にアルバムに収録されてるのは省いて、アルバム未収B面をすべて網羅してくれたらよかったのに。
実は、全盛期(84年まで)のオリジナル・アルバムを今年になって中古で一気に買い揃えたのです。

*2014.5.5
キース・ジャレット三昧

Impulse Years 1973-1976
アメリカン・カルテット時代、インパルス・レーベルに残したアルバム群をまとめた9枚組。ぼくも含め、ほとんどの人は代表作「生と死の幻想」くらいしか聴いたことないのでは? この安価ボックスで一括ゲットしてしまおう。

Concerts: Bregenz/Munchen(ヨーロピアン・コンサート完全版)
これまでは3枚組LPのうち1枚目のみ単独でCD化されていたが、ようやく全編まとめてCD化。モーツァルト風になったりアラブ風になったりする。「ケルン」は聴き飽きた、という人にオススメ。
"Mon Coeur Est Rouge" (Paint My Heart Red) アンコールの一曲。この完成度。素晴らし過ぎる!
キースを聴くなら、斜に構えて批判的にならず、素直な気持ちで、キースになりきって感情移入すると陶酔感・カタルシスを得られます。

キース・ジャレットの頭のなか
「キース・ジャレットとは何者なのか。その大いなる謎を解明するための試論であり、より多角的にキース・ジャレットとその音楽を捉え理解するための補助線として位置づけたい」
キース・ジャレットを聴け!
「マイルスを聴け!」と同様の体裁で100枚の主要作品を完全解説
中山康樹が立て続けに2冊キース本を出してる。他にもディランやら英国ロックやら続々と出してるみたい。いったい中山康樹の頭のなかはどうなっておるのか?

(2014.6.28 追記)
昨年こっそりと出ていた、1986年の未発表録音「No End
ベースやドラムを一人多重録音し、その上でギターをチロチロと爪弾くキース。2枚組20トラックずっとその調子。当時発表されていたら相当に物議をかもした事だろう。歌は入らず即興ではあるものの、グルーヴ感はジャズというよりクラウトロック(カン、ファウスト、グルグル…)みたい。パーカッションの感じとか曲調はアメリカン・カルテットに近いかも知れない。

(2015.11.24 追記)
キースのアメリカン・カルテット(一部クインテット)には、オーネット・コールマンのフリーキー感覚と、パット・メセニーのフォーキー感覚に共通するような、稚気・無邪気さ(イノセンス)を感じる。
似たような雰囲気を味わえるアルバムとしては、アメカルの二人が参加してるパット・メセニーの「80/81」とか、共通するフォーキー感覚を持つゲイリー・バートンとキースとの共演盤(名曲揃い)がある。

*2014.3.27
Miles at the Fillmore (Miles Davis Live 1970)

4日分のライヴを2枚組LPのそれぞれ片面分に収めていた「At Fillmore」を、元のマルチ(8トラック)テープに立ち返ってリミックスしたノーカット完全版4枚組。(ブートレグ・シリーズ第3弾)
もともとが一日50分ほどの短いセットだったようで、テオ・マセロが編集で全体の半分くらいに短縮していたことになる。
なぜかキースとチックの位置が元のアルバムとは反対になっていて違和感がある。ステージ上と同じく、キース左・チック右にして欲しかった。4月のフィルモア・ウェストをボーナス収録したのも中途半端で不満が残る。

*2014.3.21
大瀧詠一お別れ会

奥様の静子さんの話が泣ける。
昨日は久しぶりに「EACH TIME」アナログ盤を聴いていて、"レイクサイド・ストーリー" のとこで感極まって泣いてしまった。2011年、震災の後にNHK-FMで大滝特集があったときは "雨のウェンズデイ" で号泣したのだった。これからもそれらの曲を聴くと泣いてしまうかもしれない。

関係ないけど、キャラヴァンのドラマー、リチャード・コフラン(コグラン? クーラン?)も昨年12月に亡くなっています。
Richard Coughlan RIP (1947-2013)
いつのまにか新作が…知らなかった。最近もライヴやってるようだけど、メンバーってどうなってるんだろ。

ところで、エーハブ船長は何処へ?

*2014.3.16
マスタリングが良好なBOX2種

・The Police Message in a Box (1993)
やや古いボックスだが耳に優しく自然な音で聴ける。逆にボブ・ラドウィグが手掛けたポリス関連の2003年リマスターはメリハリがキツく歪みがちで聴きづらい。ロキシー・ミュージック関連のリマスターも同傾向だった。ぼくの中で Bob Ludwig は信用できない名前になっている。

・ELO Flashback (2000)
同時期にバラで出た4種はメタボ気味のリマスターだったが、このセットではダイナミック・レンジが広く素晴らしくクリアな音が堪能できる。マスタリングにダグ・サックスの名がある。さすが。ぼくの中で Doug Sax は信頼できる名前になっている。

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Turn Me Up!
あなたはどのグループ?

*2014.3.8
引き続きメタボCDについて

さらに確認作業を続けた結果、2000年以降どころか90年頃から既にメタボ化は始まっていたことが判明。その最初期の一例は90年のジェフ・リン「Armchair Theatre」で、潰れた音が目の前に迫って来る典型的なメタボCD。ELO時代からこんな音だったような気もするが。
ポール・マッカートニーは、89年の「Flowers In The Dirt」や91年のアンプラグドではスッキリとスリムな音なのに、93年「Off The Ground」あたりから徐々に脂肪が付き始め、2007年「Memory Almost Full」に至ってはタイトル通りの飽和状態。まるでAMラジオ並みの酷い音質になってしまってる。これじゃ次のアルバムを買う気にならないよ。
近年の新作CDの中からメタボじゃないのを見つけ出すのは至難の業。今のところ、マーク・リネットが関わったブライアン・ウィルソンの数枚しか見当たらない。
リンダ・ロンシュタットの「We Ran (1998)」は、元の録音はそれほど悪くなさそうなのにボブ・ラドウィグのマスタリングで潰されてしまった。この翌年に出た4枚組ボックスには「We Ran」の3曲も含まれていて、そこでは名手ダグ・サックスのマスタリングによって一皮むけたクリアな音に生まれ変わっている。自分の録音を台無しにされたジョージ・マッセンバーグのリベンジに違いない。ディスク1冒頭に持ってきてるのも「どうだ!」と言わんばかり。
ただし、メタボ化は全部マスタリング・エンジニアの責任とは言い切れない。時代の趨勢には逆らえないだろうし、プロデューサーか誰かお偉いさんの要請かもしれない。「Flowers In The Dirt」やブライアン・ウィルソンのマスタリングを手掛けていたのは誰あろうボブ・ラドウィグなのだ。

80年代に出たCDはガッツのない痩せた音とされてたものだが、改めて聴き直すと風通しがよくスッキリ引き締まっていて気持ちよく聴けるものが多い。今からすればパラダイスだったのかもしれない。90年代以降の作品もフラットなトランスファーで聴いてみたい。ラウドネス・ウォーの問題が顕在化してきた現在ではそのような動きがあってもいいのではないかと思うのだが。(元の録音自体がダメではどうしようもないか…)


<前回の補足>
前回は一口にメタボCDとまとめてしまったが、新作と旧作リマスター再発とでは音の傾向が違うように思える。新作の方は、細部が無惨に潰れるのも構わず音を大きく太く肥大させ圧倒させる。一方リマスター再発は、音を大きく太くもするが、さらに輪郭にメリハリを付けてハッキリクッキリさせ、以前との違いをアピールするという傾向。新作がメタボなら、リマスター再発は筋肉増強剤でムキムキに改造もしくは豊胸手術でグラマラスに変貌させるようなもの。これじゃメタボと反対じゃないか(笑)
音圧を上げたリマスターが悪とは限らない。魅力的なリマスターの例を挙げると、2008年にボックスで出たビリー・ジョエルの「ストレンジャー」(マスタリング:テッド・ジェンセン)は音圧を稼ぎつつも聴き疲れの少ない好ましい音だった。クリムゾンの30周年リマスターやスティーリー・ダン、コステロ2枚組シリーズ(Rhino/Warner)も良好。
何を持って「いい音」「悪い音」とするか、人によって意見が異なるかもしれない。ぼくの場合、ボリュームを上げたくなるか下げたくなるかで判断する。気持ちよければいいという直感的なもの。


*2014.3.2(2014.3.3 補筆改訂)
いい音・悪い音(メタボな音)

「いい音」自然で聴き疲れしない音(主に70年代のアナログ・サウンド)
発する音の周りに空気感があり、その場の空間が感じられる。広がり・奥行き・開放感がある。
<例> フェアポート・コンヴェンション(ジョン・ウッド)、ライ・クーダー(リー・ハーシュバーグ)、マイケル・フランクス(アル・シュミット)、リンダ・ロンシュタット(ジョージ・マッセンバーグ)等々。(カッコ内はエンジニア名)


「悪い音」やたら音圧が高く圧迫感のある音(2000年代以降の傾向)
レベル(音量)を盛り込み過ぎて、終始VUメーターがレッドゾーンに振り切れてるような状態。ヴォーカルの音像がデカくてツバが飛んできそうなほど目の前に口元があり、ベースはブンブン歪んでうるさく耳につく。超高域・超低域がカットされ中音域に密集しており、レンジが狭い。よく言えば「芯がある・ガッツがある音」、実際は繊細な部分が押し潰されてノペッと平坦にナラされ、開放感・空気感が感じられない。雑踏の中で聴く携帯プレーヤー(またはカーステ)に適した音として広まったのかもしれないが、部屋でスピーカーを鳴らす真っ当なオーディオでは聴きづらくて困る。このように脂肪が付き過ぎて肥大したような音をこれからは「メタボな音」と表現したい。(各個人の好みや使用機器によっては、逆にこっちの方が良い音だ、と感じることも十分ありえる)

最近ようやく気がついた。2003年頃から新しい音楽より古いクラシックを聴くことが多くなったのはメタボなCDの音質が原因で、そのことを無意識ながらも感じていたためなのかもしれない、と。今から思えば、若手だけじゃなくベテランの新作もことごとく聴きづらく、そのため繰り返し聴く気にならなかった。
それに気がついてからというもの、手持ちのCD(主にロック)を色々と聴き返しては音を確認している。振り返ってみると、始まりは90年代後半までさかのぼる。
メタボCDの例(ほんの一部)を挙げると、
Paul McCartney「Flaming Pie」(1997)
Todd Rundgren「With A Twist」(1997)
King Crimson「The ConstruKction of Light」(2000)
ELO「ZOOM」(2001)
George Harrison「Brainwashed」(2002)
Elvis Costello「When I Was Cruel」(2002)
Peter Gabriel「Up」(2002)
Kevin Ayers「The Unfairground」(2007)
Graham Gouldman「Love & Work」 (2012)

新作だけじゃなく旧作のリマスターによる再発にもこの傾向は見られるようだ。幸か不幸か、ぼくは新規にリマスターされたからといって既に持ってるのを買い直したりはしない方なので手持ちは比較的少ないと思われる。改めて確認すると、バーニー・グランドマンがリマスターしたとされる荒井由実のボックスがギラついた音だった。ワイアットとピーガブの2002年紙ジャケも怪しい。エッジ(輪郭)が強調された結果、小音量で聴いても迫力があり細かい音も聞こえ、以前より音が良くなったと錯覚させるのだが…。「デジタル・リマスターで音質向上」との謳い文句には要注意。90年代以前の古いCDは処分しない方がよさそうだ。ちまたでは既にこのあたりのことは知れ渡っているようで、過剰な音質改変が施されていない旧規格CDにプレミアが付いたりする例もあるらしい。
最終的な音を決めるのは録音エンジニアよりもマスタリング・エンジニアの方らしい、ということも分かってくると、誰がマスタリングをやってるのか、その名前が気になり出す。
ラウドネス・ウォーとかフラット・トランスファーというキーワードは少し前から知ってはいたが、遅ればせながら、その重みをひしひしと感じてきた今日この頃。

参考図書:嶋護の一枚 − The BEST Sounding CD


*2014.2.6
佐村河内ゴーストライター問題と日本人の音楽受容

昨年、あまりにも騒がれてるから、どんなもんかと思って「HIROSHIMA」買っちゃったよ(中古で)。で、一回聴いた。手の込んだ労作なのだろうが全体がモノトーン(単調)で聴いてて退屈、そんなに持ち上げるほどの曲とは感じなかった。みんなこれを聴いて本当に感動してるの? ただ、耳が聞こえない人が作ったという背景(お話)に酔ってるだけじゃないの?って、この作曲家を絶賛する世間の評価が疑問だった。別人の作との事実が明らかになった今になって手のひらを返したようにバッシングする世間の反応に、ただただあきれるしかない。音楽自体は何も変わっちゃいないのに。(結局のところ耳も聞こえてたらしいけど、そんな事実も曲の評価とは関係ない)

そもそも日本人はクラシックに限らず音楽に精神性やストーリーを求める傾向が強い。感動のエピソード(例:フジコなんたら)とか歌詞(例:トイレの誰かさん)のおかげで売れる。文学的意味付けがないと音楽そのものを純粋に聴けない人が多いのだろう。今回の問題は、そうした日本人の音楽受容(音楽の聴き方)がいかに貧しいものであるかを浮き彫りにしたように思えてならない。(音楽に精神性・文学性を持ち込んだ先駆者がベートーヴェン、「現代のベートーベン」とは言い得て妙か?)

本人もゴーストライターも今後まともに(社会的に)活躍できる場は一切ないはずだ。公演中止・CD出荷停止即廃盤となり、この世から抹殺される楽曲群やCDは後々になって価値が出て来るだろうか、それとも珍盤奇盤として話のタネになるしかないのだろうか。(ちなみに「HIROSHIMA」のCDは収録時間が81分超、これはぼくの手持ちのCDの中で最高記録)

(追記:CDの販売価格は既に高騰している。数年前の酒井法子を彷彿と…)
(余談:佐村河内と新垣の関係って "Blue In Green" におけるマイルスとビル・エヴァンスみたい…かな?)

(2014.2.8 追記:アマゾンで該当CDのページが削除された模様。中古での販売も許さない、ってか…)


*2014.1.25
The Beatles The U.S. Albums

初CD化アルバムも含んだ全13枚組のアメリカ編集盤ボックス。日本盤は31,500円(日本語ブックレットだけで1万円以上ってこと?)

これは「買い」か?

そもそもビートルズ本人達の意思とは無関係にキャピトル(米側レコード会社)が勝手に曲順を変えたり音をいじったりして出したもの。ビートルズ関連のブツ(アイテム)を収集することを目的としているコレクターであれば、問答無用で買う(買わなければならない)から問題外として、普通の音楽ファンであれば、無視して結構。2009年にリマスターで出ている英盤オリジナル・アルバムを揃える方が先だ。

コレクターになり切れない(ぼくのような)中途半端な音源マニアは、オリジナル(英盤)とは違う米盤独特のミックスとか聴感上の微細な違いを確認してほくそ笑むために買ってみようか、と思わないでもない。

しかし、実際に米盤発売当時の音源が使用されているかどうかかなり怪しい。一部の音源は2009年最新リマスターと同じであるらしいのだ。そうなるとこのボックスの価値が揺らいでくる。ジャケットや曲順から米盤の雰囲気を擬似的に味わう、というくらいしかない。米盤の完全再現でなければ、マニア的な楽しみ方(些細な違いの聴き比べ)が出来なくなるだけでなく、資料的価値もなくなってしまう。こんなのリリースする意味がないし、歴史をねじ曲げる犯罪的行為に等しい、とは言い過ぎか…

以前「Capitol Album 1/Vol. 2」という4枚組2セットで出ていたものの方が米盤オリジナルに忠実らしい。(ぼくはどっちも持ってないけど…)

輸入盤はバラでも出るようなので、どうしても何か買うとすれば、今回初CD化された「A Hard Day's Night」のサントラくらいか。英盤には入ってないインスト(演奏はビートルズではない)が聴けるのは「Help!」のサントラもだけど、ぼくはアナログ盤で持ってるからパス。「Help!」米盤は見開きジャケットが英盤より派手で楽しいし、シタールを使ったインスト(後にインドに傾倒するジョージに影響を与えた)も面白いから、何か一枚をというならこれをオススメする。

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