Random Disc Review #8
Ry Cooder Jazz
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Ry Cooder - Jazz (Warner, 1978)

なごみます

ライ・クーダーの中では最も好きなアルバム。歌ものよりも大半を占めるインストものを特に愛聴。
ビックス・バイダーベック3連発(In a Mist ~ Flashes ~ Davenport Blues)が最高に気持ちいい。ヴァイブが効果的な室内楽的アレンジで、どこか洒落たラウンジにいる気分に。
ジョセフ・スペンスの古臭い曲(Face to Face That I Shall Meet Him, Happy Meeting in Glory, We Shall Be Happy)では、郷愁を誘うブラスバンドが、まるでトム・ソーヤーかハックルベリー・フィンの世界を彷彿とさせる。
"The Dream" にはジャズ・ピアノの巨匠アール・ハインズが客演。“セントルイス・ブルース”のような曲調。
このアルバムは「ジャズがとり得たかもしれない別の形の流れを想定して」作られたそうである。
ギタリスト、ヴォーカリストとしてだけでなく、アレンジャー、サウンド・プロデューサーとしてのライ・クーダーの才能が表れた作品。

Aerial Pandemonium Ballet
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Harry Nilsson - Aerial Pandemonium Ballet (RCA/Budda, 1971)

早過ぎたリミックス・アルバム

これは特殊なアルバムだ。初期の2枚「Pandemonium Shadow Show」「Aerial Ballet」の曲にリミックス等を施して再編集したもので、歌を入れ直したり、コーラスを加えたりもしている。その改変ぶりが才気煥発。若きニルソンのアクロバット的なヴォーカル・テクニックも冴え渡る。
初期2枚を聴いたことのない方にはイマイチ楽しめないかも知れないが、ニルソン・ファンでありながら、このアルバムを見逃している方には是非オススメする。
ボーナス・トラックもお宝。レノンの "Isolation" なんてのもカヴァーしてるが、特にエヴァリー・ブラザーズ・メドレーが素晴らしい。

Shaking the Tree
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Peter Gabriel - Shaking the Tree: 16 Golden Greats (Virgin/Geffin, 1990)

ベスト盤とて侮るべからず

タイトル曲はユッスー・ンドゥールとの共演シングルでオリジナル・アルバム未収録、しかもヴォーカルを録り直したリミックスになっている。
"Here Comes The Flood" は90年録音のピアノ弾き語りヴァージョン。
"I Have The Touch" はドラムをサイモン・フィリップスの演奏に差し替え、キーボードとヴォーカルを加えたリミックス。
他にも数曲で若干の編集が(リミックスも?)施され、曲の長さがオリジナルと違っていたり、それぞれの曲間がうまく繋がっていたりする。一つのアルバムとしての流れが考え抜かれているのだろう。ぼくの一番好きなアルバム「II」からは一曲も選ばれていないが…
もちろん単なる入門用ベスト盤としても有効だが、全てのアルバムを所有していても買う価値はある。

Pieces from the Cloudland Ballroom
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Anthony Moore - Pieces from the Cloudland Ballroom (Polydor/Blueprint, 1971)

ひたすら反復

スラップ・ハッピーを結成する以前の1971年に発表された、実験的ミニマル作品。

1曲目は20分以上に渡ってピアノが同一和音を叩き、コーラス(男女3声ずつ?)が同じフレーズをひたすら繰り返す。単音コーラス(ジュンバーバーバー)は聴いていると笑ってしまう。苦しそう (^^;
ニュアンスは刻々と変化して行くので、同じ瞬間というのがない。
2曲目はイーノ風アンビエント。
3曲目はファウストのメンバーが参加してるせいか、音色が多少ポップになっている。
どれも単純な構造でありながら、心地よい音響として結構楽しめる。

Ear of the Beholder
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Lol Coxhill - Ear of the Beholder (Dandelion/See For Miles, 1971)

ほのぼのアヴァンギャルド

飄々としてちょっと調子っぱずれ、いい味だしてるサックスおじさんのファースト・ソロ。
バラエティに富んだアルバムで、完全即興ソロの他にも、"Lover Man", "Insensatez" などのスタンダードや、デヴィッド・ベッドフォードと二人で下手糞な歌を聞かせたりする。子供がビートルズの "I Am The Walrus" を歌ってる実況録音なんてのもあり。冒頭の語りにも、ほのぼのと愛すべき人柄が表れている。

※カンタベリー・マニア向け情報:若きマイク・オールドフィールドも参加したケヴィン・エアーズ&ホールワールド(ドラムがロバート・ワイアット!)のレアなライヴ音源が少し聴ける。

94年に See For Miles からCD化された際、1枚に収めるため元の2枚組LPから1曲カットされた。その "Vorblifa - Exit" は See For Miles から95年に出た Dandelion レーベルのオムニバスDandelion Rarities Vol.1: '...There is some fun going forward...' plusに収録されている。

追記:2008年、オリジナル2枚組仕様、ボーナス・トラック追加、紙ジャケット仕様で再発された。
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