本の中の知恵


昔、本屋でバイトしていたときに一人の女性がいた。

彼女は中学時代の同級生。
昔彼女は、同級生からも疎んじられていた事があったそうだ。
私自身は聞いた事もなかったが、彼女本人も、別の友達に聞いてもそうだった。

彼女は典型的なおばあちゃんこでまた本をよく読む女性だった。
しかも、論語なんてものも読んでいたらしい。

だから、同級生たちにたいして子供すぎて相手に出来ないという風だった。

彼女がしたことで一番思い出すのが、青い顔した女性がトイレを借りに来たとき、
「ここには従業員用しかないので、お貸しできません。」
といったことだ。女性は冷や汗をかいていたのにもかかわらず。

ぼーぜんとしてしまった。
いま思えば私がすぐ出ようとしていた女性を引き止めて、トイレを貸してあげればよかったのだか、それすら忘れてしまった。

彼女には自分は物事を正しくわかっているという意識があった。
それはおそらく彼女の周りの大人の話や本から手に入れた知識を自分のものとしてしまったからだろう。
しかし、それは、加工された知識で自分の経験からうまれたことではない。

知識の少ない、同年代、また周りを卑下することで、そこから得ようとすることを忘れてしまったのではないか。

彼女はいまどうしているだろうか。

まわりの同年代が、苦労してやっと得たことを彼女は手に入れたのだろうか。


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