●EWI3030m地位向上委員会

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■3030mに愛の手を!

1.はじめに

1-1.SAVE THE 3030m!

 現行EWIの音源は3020mと3030mの2種類あるのは御存知だと思います。TOM SCOTTを始めとするウィンドシンセ黎明期のプレーヤーから、最近までのT-SQUAREの歴代ウィンドシンセ奏者が軒並みアナログ音源を使っていたこともあり、圧倒的に耳に馴染んでいる為か

ウィンドシンセの音=アナログシンセと言う図式が出来上がっています。

 その為人気はアナログシンセである3020mに極端に集中しています。しかしながら、果たしてそれは・・・?

 勿論全ての奏者がウィンドシンセと同様にトランペット、サックスと言った生の管楽器を複数、思いのままに演奏出来れば何の問題もありません。しかも同時に沢山の管楽器を一人で演奏出来れば(物理的に可能で、そこまでの芸があるなら)おそらく一生食うに困らないでしょう。あまつさえヴァイオリンだったりギターだったりを吹いて演奏出来れば!!その上リバーブなんか掛かっちゃったりしてからにして!?(スノーク爆

 流石にそりゃ無理ってもんです。しかし、それを可能にするアイテムとして、お忘れではあ〜りませんか?・・・3030m。
 AKAI EWIシリーズ唯一のPCM音源にして専用音源ならではの滑らか〜なコントロールが行え、かつ簡略化された操作体系の下、即時的に演奏面での煩雑さはありません。

 が、しかぁし!

 3020mに比べ、なぜか圧倒的に人気の無い3030m。

「何で?? って伺いたい! あんな良い物を!!!」

という書き込みが「T.K.HomePage」にあってから早1年余。そこから「3030m救済キャンペーン」として始まったこのムーブメントが今、JWSAの本サイトで大きく展開します。ここらでひとつ、薄幸の3030mについて、3030mにしか出来ない事・・・探してみようではありませんか?
以下、T.K.BBSにて寄せられた書き込みをまとめ、更なるアイディアの提案やTIPSを織り交ぜ構成致しました。勿論他に御意見等ありましたら、「3030m救済キャンペーン臨時掲示板」に書き込みして下さい!ぜひ皆さんの意見とアイディアで「レッドデータブック(絶滅危惧種リスト)」の最先鋒、3030mに今一度チャンスを与えてみましょうぞ!

 尚、ここから先の記述は主に初〜中級者を想定したものです。ヘヴィーユーザーの方々には多少物足りない内容かも知れませんが、記述チェックというおつもりでお付き合い頂ければ幸いです。

 

1-2. まぁ、とりあえず知らない事には話しになりませんので・・

 ■3030mの特徴

 まずはスペックを追いかけてみます。

 と、AKAIの既存サンプラーの構造を流用して、それまでのEWI専用音源の中では出色のスペック。サンプラー譲りのクリアでナチュラルな出音と素直で使いやすい内蔵リバーブは3030m最大の武器です。これだけ見てれば大したものです。

 今までT.K.BBSに寄せられた意見にもこの辺が反映されています。

 ▼ココが(・∀・)!イイ

   総じて、”1台完結”で”手軽に沢山の音色が楽しめ”て”扱い易い”と言う処でしょうか?

 一方、こんな意見も寄せられています

 ▼ここが気に入らん!(-_-メ)
  (下段「→」はそれに対する当時の筆者の意見)

 成る程。音質については”クリアでナチュラル”な反面、リード用音源としては多少”押しが弱い”のかも知れません。波形もROMに内蔵されてますから追加も変更も出来ませんし。他、中々全ての条件を満たすもの、も無いっちゃ無いけれどもそれにしてもこのマイナス面をどうにかしたいな、とお考えのユーザーが沢山いる事を改めて認識した次第です。

 総じて”音のインパクトがアナログシンセと比較して少々弱く、取り回しが若干不自由”という処でしょうか?

 その後、そうは答えてみたものの「どうにかならないか」と考えてみました。以下、その考察の結果をお話し致します。


 

2.こういう風に使ってみたいんだけど・・・ 

2-1.出せる音・出してみたい音・使えない音

 とりあえず、こんな音が「使える」とか、EDITする際に使い勝手の良いもの、お勧めのプリセット等を列挙します。

 ▼これはイケるぜ!
  (下段「→」はそれに対する当時の筆者や他のユーザーの意見)

 具体的にどこをどういじれば良いのか?この段階では中々想像するのも大変でしょうが、ちょっとイメージしてみて下さい。後程EDITのヒントになる(かも知れない)部分のお話しを致します。 

 ▼ゴメンなさい、はっきり言って「使え」ません!若しくは「出ません!」

 取り付く島も無い様な状況ですね。内蔵サンプルの性格上致し方無い部分のお話です。この辺につきましては後半お話ししたいと思います。

 

2-2.その他の意見

 他、参考になりそうな意見です。

    ま、ごもっとも。「自分の気持ちを乗せられる音」が無い、と言う意味なんでしょう。

    波形ROMを使ういわゆるPCM音源では少なからず発生する処ですね。こればっかりは本体EDITだけではどうにも出来ない部分でしょう。

ではありますが、こういう3030mどこまで使いこなす事が出来るか?!いよいよ勝負の時です!


 

3.スタンドアローンで追い込んで!前編 

 先程いくつか上がっていたNG部分をもう一度確認します。 

 この中で何か解決出来るものはないでしょうか?「本体で和音が出ない」とか「波形の拡張が・・」とかはそもそも不可能なので(デカい!ってのも・・・)その内の一つについての対処を考えてみました。

 

3-1.本体EDITで追い込む (1) 物量作戦!

 ■音の「細さ」「軽さ」についての対処法

 さて”音の細さ”云々って処ですが、これはですね・・・・・・本当難しいんです(爆)。そのままでは何とも・・・・・。

 って、それで終わっちゃ仕方無いのでちょっとだけ。

>音にもうちょっとコシがあるほうのがいいかな?
>バックの演奏に埋もれてしまう感がある
>何か音が細い

 いやごもっとも。同じ事を感じていました筆者の取った対処は

 ▼本体だけで出来る事(1)・・・・・まずは重ねる

 3030mでは2つの波形を混ぜて出力出来ます。これを使わない手はありません。早速、音色プログラムのEDITに入りましょう!
 *但し!3030mは音色メモリーが全てRAMの為、必要な音色データは予めバックアップを取っておく事をお薦めします。

  1.  対象となる音が波形が1こだけの音であれば2こにします。
     フロントパネル上”A-B MIX""1 WAVE MODE""2WAVE MODE"にしてみましょう。単純に音の構成要素が増えるので、厚くなった感じがします。
     →欲しい波形を”主”とするならば”従”にあたる音を用意します。
     
  2.  ”従”にあたる音は、厚みが出そうな波形を名前やピッチにこだわらず当てて行きます。
     肝はプリセット後半に入ってる「SAW」、「SQUARE」、「TRI」といった所謂アナログ波形です。意外に自然な感じでPCM波形に
     彩りが加わります。
     
  3.  足したアナログ波形はそのままでは無く、ピッチエンベロープを掛けたり、PULTH WIDTHをいじったりして何か一味加えて足しました。
     シンセサイザーの出力波形はアナログ、デジタル関わらず案外無表情なものです(変に性格付けがされていても逆に扱い辛いん
     ですけど)波形そのものに”動き”を与えてあげる事でナチュラルな躍動感を作ってみました。
     
  4.  許せる範囲でデチューン掛けました。
     3030mはデチューン(オシレータ間のチューニングのずれ)が割に大きく掛かるので控えめに。ずらし方も+1と-1の様に+−同じ数値
     でなく違う設定にしてあげると、音程のずれからくる”うねり方”が一定ではなくなるので自然なずれ方になり易いですね。場合により
     オクターブで重ねてみても良い結果が出るでしょう。勿論音量バランスは重要です。
     

 ここまでで何とか対処出来ればしめたもの!波形の重ね方って結構重要ですよね。3030m自体は構造がシンプルなので、本体のEDITも比較的楽に出来ると感じています。よって、とにかくいじり倒して(その前に押し倒してはいけません)みる事をお薦め致します。しかしながら、ただ単に足しているだけではなく後述の「VELOCITY START」で波形の再生ポイントを変えたり、アナログ波形のモジュレート等その”足し方”がキモな訳で、このように「使えるものは使い倒す」スタンスがPCMシンセで音作りする上では最も重要なポイントでしょう。2つまで混ぜられますから、混ぜるもの同士に「どの要素を持たせる」のかを明確にして「只の足し算にしない」これ重要。

 

3-2.本体EDITで追い込む (2) 波形で追い込む!

 ■波形データのバリエーションについての対処法その1

 正直今時のPCMシンセで内蔵波形が70個、と言うのはかなり辛い!しかもROMの為、波形データの追加が不可能!全くどうすりゃ良いのか?!お嘆きの貴方。「VELOCITY START」はお試しになられましたかな?これ最強。

 ▼本体だけで出来る事(2)・・・・・VELOCITY STARTを有効利用!

 まずは「VELOCITY START」についてお話し致しましょう。これは「ヴェロシティ スタート」と読み、”WAVE”のパラメータグループの中にあります。発音の際の、息の入れる速さによって波形の再生ポイントを変える事が出来る機能の事です。実際の処は息圧が多ければ波形のアタック部分を削って(再生ポイントを遅くして)発音する、と言うものです。強く(速く)吹き込む時と弱く(遅く)吹き込む時で音の鳴り方を変えられる訳ですね。

 例えばS37:Harmonicaの例でお話しましょう。3030mに限らず大概のシンセサイザーの内蔵波形の”ハーモニカ”ってブレスのノイズまできっちり入ってますよね?ハーモニカという楽器、音の立ち上がりそのものは(息を入れてからリードが鳴り始め、最大音量になるまでに)少しタイムラグがあります。その間のタイムラグやブレスノイズを表現する事が、PCMシンセにおいては”リアルさ”に繋がる部分と言えます。3030mのプリセット音色でもそれは同様で、多少立ち上がりが遅い、ブレスノイズの混じった音色として入っています。

 そこで、S37:Harmonicaで”VELOCITY START”を思い切って”50〜60”前後に設定してみて下さい。すると?ハーモニカっぽいけどもアタックが削られていますから、単純な波形みたく聴こえるはずです。70位にすると、もうブレスコントロールでニュアンスがつかないレベルまで行く筈です。如何でしょう。他の波形でも試してみましょう。少ないながらもバリエーションを得るのには有効な手段かと。

 ■波形データのバリエーションについての対処法その2

 例えば1つのプログラムの中で音色のバリエーションが欲しい!そんな時普通のシンセならどうしましょう?単純にヴェロシティで切り替えたり或いはスケーリングで音域によって波形の再生バランスを変えるとか・・・。幾つか方法はあるとは思います。3030mならではの方法を一つご提案します。「GLIDE WAVE」をご存知ですか?これまた最強。

 ▼本体だけで出来る事(3)・・・・・GLIDE WAVE!って??

 では「GLIDE WAVE」について。GLIDE・・・キーグライドとはアナログシンセで出来る幾つかの特徴的な技の一つで、離れた音程を滑らかに繋げてしまう機能の事です(ちょっと前ですが某T-SQUAREに本田氏が在籍当時「TRUTH」のエンディング付近で高い音から低い音へ移る時に”きゅううううううううん!”ってやってた、あれがグライドです)。ヴァイオリン等では「ポルタメント」として知られている奏法です。シンセリードや効果音にはよく使われますが、本来サンプリング波形を使用したPCM音源ではとても難しい技の一つです(大変高度な演算を要求されるので)。

 3030mではEWIそのもののインターフェイスとしての意味合いからちゃんとフロントパネルに”GLIDE”ノブもありますし、実は音色プログラムにもパラメータがあります。実は内蔵波形の中でも、5種類のアナログシンセ波形ではグライドが使えるので用意されているんですが、殆どの波形の場合グライドは効きません。一見無駄の様に見えるこのグライド。でも折角あるので、使いましょう!でも、どうやって・・・・

 実はこの3030mの音色プログラム、通常演奏時には設定されている波形が素材として再生されますが、なんと”グライドセンサー”使用時のみ再生される波形を設定出来ます。フロントパネル上”WAVE A(or WAVE B)"でメインの波形の設定"(    )"の次にあるのが"GL(     ) "ここで設定される波形がグライドセンサー使用時のみ出力される波形、つまりは”GLIDE WAVE”と言う事になります。

 通常はPCM波形が再生されていて、ロングトーンなど音がある程度持続している時にだけグライドが掛けられるアナログ波形に一時的に切り替える為に、設定出来るようになっている、と推測されます。て事は、実は3030m、1つのプログラムについて最大4つの波形をセッティングする事が出来るんです。

 つまり通常はブラスセクションなんかの音を出しといて、ここぞと言う時”GLIDE”センサーを触って波形を切り替えシンセリードの音を出すとか出来る訳です。”GLIDE WAVE”にはアナログ波形以外の波形も当然アサイン出来ますので、こんな技が可能になります。内蔵波形だけではありますが。

 ここまでの内容はヘヴィーユーザーの方であれば既にお使いの機能でしょうし今改めてご紹介するまでもないのかな、とも思いましたが途方に呉れている初級者ユーザーの方の何か手助けになれば、とお節介ながらお話しさせて戴きました。

 ■波形データのバリエーションについての対処法その3

 PCMシンセサイザーの最大の利点は「そのものズバリの音が出る」。これにつきます。その昔アナログシンセで無理やり似せたトランペットやサックスの音にガッカリするケースは多かったでしょう。言ってしまえば3020mのプリセットも同じ事ですよね?「シンセなんだから何の音でも出せるんだろ?」良く言われる事ですが、そこはそれ大人になれば世の中そんなに都合良く出来てない事は判って来ます。実物の楽器などから採取(サンプリング)した音源波形を持ち、とりあえず”それとそっくりの音が出る”PCM音源はまさしくシンセ業界の革命だった訳です。3030mもそのPCM音源である訳ですが、ここで大きな壁に突き当たります。

 特に生楽器などに顕著ですが、サンプリング波形と言うのはその音の”ある一瞬だけ”を捕らえた写真のようなものです。基本的にその表情そのものは、どんな状況であれ変わる事はありません。なので、どう使っても「同じ印象」である事ははっきり言って否めません。音色表現、に関しては絶大な効果を持つ反面、PCM音源の場合は素材(波形)が何かがはっきりしているが故その素材自体が気に入らない場合、即「使えない」事になってしまいます。「物足りない」「使えない」と言った印象は正にここに原因がある訳です。

 しかしながら、そうも言っていられません。世の中3030mだけで勝負掛けている方々も多くいらっしゃいます。 

 ▼本体だけで出来る事(4)・・・「あるがまま」に、もしくは「あるが如く」に

 ここでPCM音源と付き合う上で、音作りのポイントになろうかと思われる事をお話し致します。

 波形データと言うのはあくまで素材です。例えば「ギター」の音色を作ろうと思えば「GUITER」と名の付く”素材(波形)”を持って来れば当然の事ながら一番手っ取り早い訳です。実際には「大根おろし」が欲しい時にゴボウを持ってくる事もありえません。

 しかし、シンセサイザーにおける音作りでは”ゴボウはあり”なのです。つまり「より”それらしく”」が通じる世界なのです。キラものが欲しい時には、その素材は”BELL”で無くとも良い訳です。それらしく聞こえてしまえば、何を使おうが自由。波形データの名前に拘らず、柔軟に素材を選び用いる事で可能性の幅は一段と広がるでしょう。先述の「VELOCITY START」などとも組み合わせれば、又更に広がり方も増えると言う物です。どうしても素材(波形)が持つ本来のイメージを固定概念化して捉えがちになります。これは仕方のない事ですが、そこから離れてみる事でより自由な世界を手にする事が可能になります。

 これは「その楽器の特性・特徴に全く拘らず自由な発想で表現する」と言う事に繋がります。シンセサイザーの業界はどちらも”あり”なのです。「TROMBONE」の音色でトランペットの音域で吹いてみるのも良し、「CLARINET」でベース風にやって見るのも良し(ハービー・ハンコックの「カメレオン」みたくなりますよ)。欲しい音を欲しい音域で使う事、自然な様で実際には中々難しい事ですがシンセの業界では”あり”です。

 一方で、よりその素材を活かすべく「奏法」で追い込む、というアプローチもあります。素材となっている楽器の特性・特徴をつぶさに検証し、追及し、そして再現する。これはシンセサイザーで実楽器をシミュレートをする上で最も重要な事柄です。ピアノの音色であれば、ピアノの奏法を用いなければピアノには聞こえません(少なくともピッチベンドは有り得ません)。ギターの音色でオルガン風に演奏したのでは、それは「ギター風のオルガン」になってしまうはずです。シミュレートする上でも、波形はあくまで”素材”です。演奏者の力量が加わらなければ、それはただの「止まった写真」に過ぎません。その素材・・・楽器本来の奏法を踏まえ、それに則った演奏を加える事でよりそれらしいリアルな表現が可能になるでしょう。

 「よりリアルに」と言う場合も、「より自由に」と言う場合でも、シンセサイザーは有効なツールに成り得ます。しかしながら、そこには必ず「演奏者」と言う最も重要なファクターが必要になります。どちらのアプローチを取るのもあり、どちらも出来れば尚良し。シンセサイザーの世界の自由さは反面演奏者の力量や個性、音楽性と問われる部分も持ち合わせています。けれども難しく考える必要もありませんので、とにかく思った通りにまずは使ってみる事は何より重要でしょう。

 ■アナログとデジタルの間に一人の私・・・アナログシンセのシミュレート

 3030mのプリセット波形には5種類のアナログシンセ波形があります(音域によりフォルマントが変化しない事から推測ですがDCOによって作られているのではないか、と思うのですが)。所謂アナログのニュアンスからすれば、幾分”線の細さ”は否めない処です。本来3020mが鳴らせないような音色の補完を目的に使う(アナログ3020mで出せる音ならば3020mでやってしまう)のが健全と言えますが、山あり谷あり人生、そうも言えない部分も勿論あります。そこでアナログシンセのシミュレートをする場合は、本来1系統の出力だけで作られているようなシンプルな音も(3020mで言う「AXIS」などのシンセリード系であっても)、敢えて2系統使って音作りをされる事をお薦め致します。全く同じ波形を重ねるのもあり、”SAW+RANP”、”SQUARE+TRI”など一見性格の違いそうなものを重ねてみて下さい。意外に合うものですよ。

 

 *参考資料

 パッチマンミュージックで3030mの音色パッチのデモが聴けます。
  http://members.aol.com/Patchman1/akaiEWI3030m.html
 音づくり・音色を活かす演奏の参考にどうぞ。
 ちなみにこのデモ、「MIDI EVI」で演奏されてるようです。


 

4.スタンドアローンで追い込んで!後編

4-1.本体EDITで追い込む (3) ”TRUTH”やりますか?

 さてさて、では3030mベースで音作りに挑戦してみたいと思います。ターゲットは、そう”TRUTH”と”宝島”!ウィンドシンセ史上最も有名になったあの曲のあの音、そしてスクェア史上最も人気のあるであろうあの音を再現してみたいと思います。

 尚、先述の通り、音色と奏法は切っても切れない関係にありますが、ここでは特に音作りに絞ってお話させて戴きますので予めご了承下さい。

 ▼大前提その1・・まずどれに似せるか?

 これは重要です。何せシミュレートですから”似せる相手”を特定しなければなりません。しかし、これはちょっと難儀です。と、言うのも古くはリリコンからWX7、EWIとスクェアで使われた ”楽器の変遷”はウィンドシンセの歴史そのままとも言え、サウンドにモロ影響しているからです。当然楽器が違いますから時々により奏法も違いますし、また基本的に全てコントローラですので鳴っている”音源”そのものの違いもあります。勿論伊東氏、本田氏、宮崎氏という”奏者”による違いも生じます。
そこで、まずは似せる”対称”を絞りこみます。具体的に”いつ頃”あるいは”あのアルバム”の様に、これから似せよう、とする音をはっきりさせる必要があるでしょう。

 2曲とも録音が残っているものでも幾つかのバージョンが存在しますし、その中から特定のものを選んでおきます。標準的に(?)アルバム「TRUTH」、「SPORTS」それぞれに収録されているものを想定しましょうか。エフェクターも重要なファクターですが、とりあえずここでは3030m内蔵のものを使う、と言う事にしましょう。

 

 ▼先に「TRUTH」に取り掛かります。

 「TRUTH」、レコーディングにはリリコン、リリース当時のツアーではWX、そしてその後ブレークしてからはEWIと、実は大変複雑な状況にあった曲ですね。
 レコーディング時にはかのMINI MOOGを使ったとか使わないとか。大変太い”シンセリード”の権化みたいな音ですね。リード音色の場合はその波形のキャラクターをストレートに出している場合が多く、この「TRUTH」でも基本的には「ブー」としかいっていない、と言えます。(勿論色々なニュアンスで捕らえて頂いて結構ですよ)MINI MOOGの場合は、その波形自体が大変重みのある太い音色である事が特徴とされ、大変古い機種ですが未だに珍重されている楽器です。
 「波形」は普通2つまで同時に使う事が出来ます。(これは3030mもそうですね) ちなみに伊東氏は以前雑誌のインタビューで「波形にはパルス波(”ヴー”って感じの音です)を使った」と語ってましたが、MINI MOOGの持つ”太さ”により、ノコギリ波(最も良く用いられる、明るく太いニュアンスの波形、アナログシンセには殆ど装備されています)の様な聞こえ方をしています。


 ウィンドシンセでは、その音の明るさや大きさを息でコントロールするのが一般的ですが、この「TRUTH」では大きさはかなり変わっていますが、音の明るさはどうでしょう?比較的変化は少ないようです。

●ここまでのポイント・・・
 *音そのものはひどく単純(1つあるいは2つの素材で出来ている)
 *音量はかなり変わるが、音の明るさはそう極端には変わらない

 

 ▼アプローチショットその1

 では音色作りのアプローチについてお話しします。3030mで可能な限り”MINI MOOGっぽさ”を追求しましょう。
 

 ■まず元になる音色プログラムを選び、それを修正して目的に近づけましょう。

●ここまでのポイント・・・
 *素材はアナログシンセっぽいものをまず選ぶ
 *音の明るさ(硬さ)を調整する・・・多少柔らかくなる程度

 

 ■次に”太さ”をどうにか作る為に”音を重ね”ます。

 フロントパネル”A-B MIX”ボタンを数回押して頂き、素材(波形)の数を選びます。”1WAVE MODE”か”2WAVE MODE”を選べますので、ここでは”2WAVE MODE”にしましょう。その後(MIX100−0じゃなくして) A,Bどちらかが”SAW”と言う波形になっている筈ですから、もう一方の波形を ダイヤルで選びます。おすすめは”LAMP”ですね。MIXの値は、とりあえずSAW側をメインと考えて多めにしておけば宜しいでしょうが、あくまでもお好みで調整して下さい。”LAMP”をメインにして、音の輪郭を足すイメージで”SAW”を足す方向でも良いでしょう。

 この段階で最初の状態よりもリッチな音になっていると思います。尚”TRIGGER”というページが出るはずですが、迷わず”SINGLE”にします。

 

 ■これでももーちょっと足りない、とお感じであれば、両方のWAVEの音程を微妙 にずらします。パネル上”WAVE A”(もしくは”WAVE B”)ボタンを何回か押 し”TUNE”を+−1〜2位にします。(お好みでもっと多くても可) 多少”うねった”感じになったと思いますが、アナログシンセ独特の”ゆらぎ”っぽ く聞こえればしめたものです。多少なりとも”太さ”と言うか”厚み”は出ましたで しょうか??

●ここまでのポイント・・・
 *”太さ””厚み”は重ねて作る・・・波形を足す・音程をずらす

 以上ここまでで、なんとなくアナログシンセ風味な感じは出てるのではないか、と思いますが、如何でしょうか?勿論本来のアナログシンセ並みの太さになる、とは言えませんがプリセットの状態よりは幾分よいのでは無いでしょうか?

 尚、リリコンの特徴である”不安定なピッチ”については

●ここのポイント・・・
 *ベンドプレートの感度を”半音”にして、何気に触ってみる
 *とりあえずマウスピースをいつも軽くかんで見る

 この2点をお試し下さい。

 

 ■内蔵エフェクターについて
 3030mの”売り”の部分である”内蔵エフェクター”についても触れておきましょう。 基本的には響きをつける”リバーブ”のみではありますが、プリセットの状態はかなり ”ドライ”な状態になっています。しかし「TRUTH」ではかなり深くたっぷりとリバーブ が掛かっていますので(部分的にはディレイもたぁっぷりと掛かってますが)、掛けて あげます。 パネル上”REVERB”ボタンを押し、種類を選びます。幾つかありますが 「LARGE HALL2」とか「PLATE B2」を選び、”BALANCE”を大きくしてあげま す。99近くではバンドアンサンブルの中では目立たなくなりがちですので、お好みで。

●ポイント・・・
 *”TRUTH”はとにかくリバーブたっぷり!

 

4-2.本体EDITで追い込む (4)”宝島”やりますか?

  ▼では「宝島」に取り掛かります。

 それではぼちぼち行ってみましょう。T-SQUARE史上最も親しまれている音色の一つですね。
 その音色、元々はリリコンからMIDI制御したYAMAHA DX7(FM音源)の出音だ、と言う事で、何かのインタビューで伊東氏が「ハーモニカをイメージした」云々と言うコメントを残しており、言われてみれば成る程ハーモニカっぽい軽快で爽やかなリード音色だ、と言えるでしょう。ライブなどでは音色は変遷しているようですが、我々リスナーのイメージはアルバム「S・P・O・R・T・S」のバージョンでしょう。今回は先述の通り、そのアルバムバージョンの”あの音”を目指して行きたい、と思います。

 

  ▼アプローチショットその1

 ■それでは最初に音色分析から行きましょう。

  1. 音のイメージを具体的に固めてみましょう。ここでは以下の様に設定してみます。
    ・大変軽やかな、高い音域の明るい音色
    ・パコパコ感(?)のある歯切れの良い音
    ・敢えて言うならパルス波系だけど、アナログシンセでの再現はかなり難しそうな独特の、高次倍音をたっぷり含んだ透明感のある音
    ・よく聴くとオクターブ違いの2つの音が鳴っている気がする
    ・息圧での音色変化はそう大きくは無い気がする
     
  2. 次に、そのイメージをパラメータの設定に置き換えながら、考えてみます。
    ・オクターブ違いの2つの音・・・2つ、って事は”2WAVE MODE”かな、と。
    ・パルス波系の音・・・とりあえずアナログ波形で”SQUARE”とか”LAMP”を用意しましょうか。 パルス・ウィズ(PW)の調整も必要???
    ・立ち上がりの速さ・・・どこかでEG・・・ENV(エンベローブ・ジェネレータ)使えば良い??
    ・明るい音色、透明感のある音、息圧での音色変化は少ない・・・
     基本的にフィルターでの音色変化は少なく、カットオフフリケンシ(CUT OFF FREQ)も最初から開いている

どうでしょう?イメージが固まりましたか?次はいよいよ設定に入ります。

●ここまでのポイント・・・
 *まずは音のイメージを固める・・・パラメータとの関連を見つける

 

 ▼アプローチショットその2

 ■設定その1
 前章2)での設定を具体的にしてみます。ここではプリセットS124:SQUAREをベースに作りましょう。

 今回の”キモ”は何と言っても、あの軽快な音色の素である”波形”と”立ち上がりの良さ”の2点でしょう。続いてその為の基本設定に入ります。

 ここまで設定した段階で「かなりイケてない?」と思ってOKにしちゃう向きもおありでしょう。それはそれで良いと思います。これではどうもね?と仰る向きには、ここからが3030mならではのアプローチになります。

 

 ▼バンカーショットそしてパッティング

 ■3030mならでは!
 先程までの設定でも、まぁまぁ良しとするか、ってんでいきなり吹いちゃう向きもお在りでしょう。 ここから3030mならではの方法を展開しましょう。もうひとつのキモ、そして最も重要である”波形”へのアプローチです。

 先程はS124:SQUAREでパルスウィズ(PW)をいじったりしてみました。それでOK、の場合もあるでしょうが今回波形は”LAMP”を使ってみましょう。”WAVE A(or B)”を押し、現在”SQUARE”になっている処を”LAMP”にします。そのままでは何とも言えない丸い、只の”ぽー”って音ですがここでやはり”PW”を調整してみます。3030mにおいてはこの”LAMP”波の使い方が大きなポイントになるでしょう。
 数値的には65〜70前後が良いと思いますが、多少高次倍音が混ざった素朴なパコパコ感が出ると思います。
 今回はこれを軸にしたいとおもいます。(勿論後で「やっぱしSQUAREでPWいじった方が好き」とおっしゃる向きには、それはそれでOKでしょう)
 ひとまず”2WAVE MODE”にして、”BALANCE”は”100−0”にでもしましょうか。

 さて、もう一つの波形の設定ですが・・・。

 オクターブ違いの音が鳴ってる、とか独特の高次倍音が鳴ってる、とかなんだかんだ書きましたが、思い出してみて下さい。
伊東氏はDX7での音作りに際して「ハーモニカをイメージした」とコメントを残した、と書きました。そして確かにハーモニカっぽいFM音源特有の倍音をたっぷり含んだ、ある種金属的な合成音が欲しい、と言う訳です。アナログシンセで作るのは本当に難しい種類の音色ですが・・・。

ハーモニカっぽい音が欲しい時・・・。どーするか?まんまその波形使っちゃいましょう。
 3030mはPCM音源です。3030mの内蔵波形にはちゃあんと入ってます”HARMONICA”。なにも無理してFM合成せずとも良い訳ですからもう一方の波形にはこれを使います。
 プリセット音色にも勿論ありますよね、S37”Harmonica”。じゃあプリセットそのままで良いじゃん!って。いえいえ、先述3-2でお話した通りそのままでは辛いです。ここで例の「VELOCITY START」を使って波形をアレンジしてしまいましょう。

 と同時に”HARMONICA”に設定した方の”KEY TRANS”を”LAMP”より”+12”にするのをお忘れないように。元々の金属的な高次倍音を更に基音よりもオクターブ上げてあげる事で、より倍音感が出るように設定してあげます。以前試した処では”LAMP”を+12、”HARMONICA”を+24にしていました。基本オクターブが上がるので、とまどいもあるでしょうが、結果出音が軽やかになる部分もありますので、有効だと思われます。

 この状態で”BALANCE"を”LAMP”しか聴こえない”100−0”から、多少HARMONICAが聴こえる位(お好みですが80−20位を基本に)調整してみて下さい。 いかがです?

●ここまでのポイント・・・
*立ってるものは親でも使え、ましてLAMP波尚使え

 

 この「VELOCITY START(+アナログ波形)」を応用すると、皆様おなじみの「DAISY FIELD」もサクッと出来ちゃいますし「HAPPY SONG」もOKですね。「TRIUMPH」のイントロのブラスもいけますし、なんなら「PIOGGI A CAPRI」のフルートなんかもいけるんじゃないですか?

 如何でしょう?今回の音色。最終的に3020mでもこの応用で(パルス波重ねてみて)作れない事ありませんが、どうでしょう?3030mの方が”軽やか”に出来るのでは無いでしょうか?3030m特有の”軽さ”を生かせる音色の一つではないか、と思いますが、皆さんはどうお感じになられたでしょう?

 


 

5.救う為に・・・やっぱ何か足してみるか!

5-1.外部エフェクターを使う!

 先にお話しした通り、3030mの最大のメリットは”1台完結”で”手軽に沢山の音色が楽しめて扱い易い” と言う処です。しかしながら流石に本体ではまかない切れない部分もあります。そんな時は素直に外部機器のお力を借りましょう!先述のメリットを否定する様な気にもなりますが、3030mのみお使いのユーザーの方であれば一つの可能性として捕らえて頂ければ、と思います。なに、そんなに大仰なものでなくて良いんです。折角のフットワークの良さを殺しては何にもなりませんしね。

 先程挙がっていた”NG“項目に対して、幾つかの解決策を考えてみました。

 ■音の「細さ」「軽さ」についての対処法

 ▼エフェクターの導入・・・”イコライザー””プリアンプ”様のお力を借りる

  1. ”細く”聞こえる理由として音質が全体的に高域寄りになっているのかも知れません(勿論再生機器によります)
    そこでイコライザー(EQ)で許せる範囲で高域を削り 中低域を持ち上げて見て、相対的にピークの音域を下げて見ては如何でしょうか?
     
  2. 所謂”通すだけで太くなる”と俗に言われているプリアンプ系を導入する
     音質があまりにクリアだと音が周囲の音に溶けやすくなります。そこでちょっと”汚して”あげましょう。Eギター用の真空管プリアンプなどを持ってくる事で少々”癖”を作ってみれば、良い結果が出るやも知れません。少し歪ませて見るのもあり?
     

 コンパクトエフェクターやハーフラックのエフェクターを1個追加する程度であれば、そうそうフットワークの邪魔にもなら
 ないと思いますが如何でしょうか?

 勿論これだけやった処で3020mと同じ太さになるなんて口が裂けても言えないとは思いますが、プリセットそのままではどうも・・・とおっしゃる向きには一度お試し頂いてもよろしいかな、と思いまして。

 この他、音質設定が施された楽器用高級ケーブルを使うと言うのも一つの方法です。

 

5-2.外部MIDI音源を使う!

 ■波形のバリエーションについての対処法・・・外部MIDI音源との連携

 先に”VELOCITY START”、”GLIDE WAVE”を使って波形バリエーションとする旨、お話した訳ですが根本的にバリエーションを増やしたい時には外部のMIDI音源を導入せざるを得ません。そこで3030mを外部MIDI音源をコントロールするインターフェイスとしての位置付けで捕らえてみたいと思います。

 ▼まず大前提・・・3030mのMIDI周りの確認 ”インプリ”を読む!

 3030mからはどんなMIDIコントロールが出来るのか?これは知っておく必要があるでしょう。インプリメンテーションチャート(MIDI信号対応状況表、とでも言いましょうか)を読む事でこれが判って来ます。

・基本的な部分
 ノート・オン(ヴェロシティ可変)、ノートオフ
 ……発音の為の基本情報です。

 チャンネルプレッシャー(アフタータッチ)
 ……本来は鍵盤を押した後の”押し込み方”によるコントロールの事。
 EWIにおいては、発音後の音量などの可変にあたります。

・コントロール系
 「モジュレーション    (コントロールチェンジ#1)」
 ……通常はビブラートのコントロールに使用。

 「ブレスコントロール   (コントロールチェンジ#2)」
 ……EWIの本分。そのものズバリ息圧量によるコントロール。
 MIDIフォーマット上ではこれで何しても良い事になってます。
 
 「チャンネルヴォリューム (コントロールチェンジ#7)」
 ……対応チャンネルの音量のコントロールが出来ます。

 「キーグライドタイム   (コントロールチェンジ#5)」
 ……グライド奏法の際の、音程が繋がる時間。

 「キーグライドON/OFF (コントロールチェンジ#65)」
 ……グライド奏法の際の、グライドのON/OFFのスイッチ機能。

 と、MIDIコントローラとして見た場合、大変シンプルです。(シンプル過ぎて逆に困る程)言い換えれば、ここに出ている数のMIDIメッセージしか使えない、という事になります。MIDIで外部音源をコントロールする際には、全てこの中の要素で賄う必要が出てきます。

 フロントパネルには”MIDI”というボタンがありますが、ここで設定出来るのは”CHORD=○○”、つまりMIDI上出力する発音信号を通常の”単音”にするか、”和音”にするか、和音にするならどんな和音か、という事で、様々な音色コントロール用の設定は、実はフロントパネルの各センサーの調整ノブであったりする事になります。

 ここで判る事は何か、と言う事になりますが、通常良く使うコントロールチェンジが1,2,7のみである、という事


 ・・・エクスプレッション(#11)は無い!ので、その分を#2「ブレスコントロール」で賄う事になりますが、いかんせん#2に対応している音源ってとても少ないんですよね。YAMAHAのVLシリーズであれば、何のストレスもなくスレーブとして繋がるでしょう。常に#7「チャンネルヴォリューム」が出力されますから、場合によりこれには要注意ですね。ですので、いわゆるDTM用の音源モジュールをスレーブにした場合は滑らかなコントロールは相当難しくなるのかな?と予想されます。少なくとも音量以外の(例えばフィルターの開閉など)コントロールには普通のセッティングでは#2を使うしか道は無く、対応していない音源であれば、そこは外して考える必要があります。
 また3030m本体のEXT.INを使うセッティングであれば、むしろ#7は邪魔になる場合もあるでしょう。


 このあたりにも”単体完結”を目指した一端が見て取れるようです。
 逆に考えて、このシンプルさはMIDIのマスターとしては3020mよりも向いている気がするのは筆者だけでしょうか?(その為に3020mから買い換える、とか買い足すとかそこまでじゃないですよ。勿論) 

 これを踏まえて導き出される外部MIDI音源の条件としては、以下の通りになります。

 ▼外部音源の導入・・・その条件とは???

  1. まず気に入った音が出るのか?どうか?
     当然と言えば当然ですが(爆)、意外にこの辺妥協しがちです。自分にとって重要な音にはやはり拘りましょう。
     ブラス系が得意な音源、ギター系が得意な音源、やっぱしあります。事前の情報収集は欠かせません。
     更なるバリエーションが欲しい場合は鳴らすスレーブ側に寄る事になる訳で(当然ですが)好みの波形、好みの音質の音源に出会う事も中々どうして時間も費用も掛かるでしょう。純粋に財力、体力、忍耐力が必要になりますね。
     
  2. 音源側のEDIT環境・・・MIDIコントロールの対応状況
     これは3020mの場合でも同様です。いわゆるGM音源系では音色EDITの制約が多く、意外に思い通り動かせない事が多いようです。3030mのEXT.INを使うのであればヴェロシティのコントロールの設定が自由に出来てなおかつボリュームコントロールなどを使うor使わないの選択が自由になるものがよいでしょうし、直接MIDIで動かすのであれば、コントロールチェンジ1、2、7のみで各パラメータが自由に動かせる構造のものが宜しいでしょう。
     

   (でも、無いだろうなぁ・・・)

 とはいいつつ、3030mの長所である”手軽さ”を阻害するんでは旨みも半減ですよね。全くの個人的見解で恐縮ですが、KORGの数年前のラインアップにいくつかあったハーフラックサイズの音源モジュールはお薦めです。どれもGM音源と言う位置付けでしたが、本体のみでフルエディットが可能であり、かつ音色のバリエーションも、音のキャラクターそのものも扱いやすいと感じています。少々エディットにはてこずる部分も正直ありますが、価格的にもこなれてますし比較的導入し易いと思われますのでご紹介致しました。

 

 ▼特にサンプラー導入を考えてみます・・。

 まずサンプラーを導入するメリットとして言える事は”自分の欲する波形データについて、クオリティを最優先するならサンプラー以外には無い”という事、これに尽きると思います。そもそもシンセサイザーに内蔵されている波形とはデータの量からして段違いですしクオリティは半端じゃありません。リアルなものは相当リアルです。また何通りかのバリエーションを用意し、切り替えをする事で音色表現の幅はとてつもなく広がります。

 しかしながら一般のユーザー、殊に初〜中級者の視点から見た場合、そうも言っていられないのが人情です。

 など”体力と財力と忍耐力”を相当要求されます。MIDI周りについては流石に融通は効くでしょうが、一つのプログラムあたりのパラメーターの量は3030mとは比較にならない位多くなるでしょう。EWIでサンプラーを鳴らす・・・例えば住友紀人氏の様なプロミュージシャンの場合やヘビーユーザーの皆様ならサンプラーそのものもS-6000など可能なセッティングでしょうが、まぁ可能な方でPCMは全部サンプラーだよ、と仰る方には3030m、中々”PCM”音源としての立場が無いですね(涙。多少ネガティブな発言が多いので正直AKAIさんには悪いと思っていますが、3030m+サンプラーと言うのはある意味とても贅沢なセッティングだと思いますが、如何でしょう?個人的には可能ならば是非やって見たいと思っていますが・・・。Z8をMFC-42付きでEWIで鳴らしてみたいです(切望)。

 幾つかのケースを考えてみましたが、とりわけEWIでのコントロールを考えた時何の苦労も無しに、全てにおいてベストマッチな外部音源と言うものは無い、と言って良く、この事からも”専用音源”の強みは感じる訳ですが、しかしながら!どうにかならないのか!?と言う部分も少なくは無い、と。これは3020mの場合でも言える事ですし、WXなどのウィンドMIDIコントローラーには正に切実な問題です。ウィンドシンセの世界においてMIDIとの付き合い方はかなり大きいテーマである、と言う処でこの章を閉じたいと思います。3030mに関しては、外部音源のコントロールについては扱いは簡単な反面、場合によりスレーブをかなり選ぶ、と言う結論を出しましょう。(でもEXT.INを使う場合は、KORGものはお薦めですよ。あと AKAIのサンプラー)


6.まとめ 

■最後に・・・3030mはこう使おう(簡単な結論)

 掌を反すようですが、現在の状況をシビアに見ればおそらく3030mを”新規”で購入するケースは残念ながら多くは無いでしょう。それどころかネットークションに出品されるEWI音源では近年最も多く目にするのではないでしょうか。かと言って、全く使えないものなのか?と言えば必ずしもそうとは言えない、というスタンスの下、このコーナーをお送りしてきた訳ですが、如何でしたでしょうか?専用にチューニングされた音源と専用ドライバーを持った「EWIによって『非』MIDIで制御できる唯一のPCM音源」という利点は贔屓目以上の意味があると思います、そしてシンセサイザーとしての可能性をも秘めている3030m。このコーナーが少しでも貴方の持つ3030mの世界を広げるお手伝いが出来ましたら幸いです。

 3030mを有効活用したいというあなた! そして更に「もっと使えるようにして欲しい」というあなた!まだまだ御意見募集中なので、ぜひ3030mユーザー、そしてユーザーではないものの「一言言いたい!」という方は「3030m地位向上委員会掲示板」によろしくお願いします!

 

special thanx 2 :Mr.Yoshmeme for building the basement and giving a chance

          :Yuko-Tamura and Mr.Hagiwara forParameter chart,MIDI inprimentation chart


●EWI3030m地位向上委員会

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