SONGS 50 - 41


順位 曲名 アーティスト チャート順位
50 50 Ways To Leave Your Lover Paul Simon US#1/76
49 Don't You Worry 'Bout A Thing Stevie Wonder US#16/74
48 My Life Billy Joel US#3/79
47 Rock With You Michael Jackson US#1/80
46 The Living Years Mike & The Mechanics US#1/89
45 The Boss Diana Ross US#19/79
44 Sweet Love Anita Baker US#8/86
43 Rise Herb Alpert US#1/79
42 Kiss From A Rose Seal UK#1/95
41 It's Love King's X -


50. 50 Ways To Leave Your Lover - Paul Simon


 邦題 『恋人と別れる50の方法』。しかもオールタイム50位? 狙ったとしか思えない。ありえないよ。

 僕は "GRACELAND" の成功がどうにも胡散臭くて、ポール・サイモンを遡って聴くのは非常に遅くなってしまいました。例によってトニー・レヴィン先生全仕事制覇の野望に燃えていた頃に出会ったのがこの曲を収めた "STILL CRAZY AFTER ALL THESE YEARS"。ベビーブーマー世代が中年になって目標を見失った戸惑いをかなり肩の力を抜いて歌ったアルバムで、非常に素晴らしいです。中でもタイトル曲と並んで抜群の出来を誇るのがこれ。

 シンプルで、地味なアレンジメント。普通リズムセクションがスティーヴ・ガッド+トニー・レヴィンとくれば、凄いバトルを想像しちゃうでしょう? 全然違う。軍隊のマーチング・ドラム風のリズムパターンを淡々と刻むガッドに、トニーが何とも言えない絶妙のコードを付けていく。このベースのコード進行だけで勝負あり。本当にすごいよ。スタジオで2人が冗談ぽくセッションしていたテイクをポールが気に入って「これでいこう」と採用したという話を聴いたことがありますが、歴史的な名アレンジなんてひょんなことから生まれるものかもしれない。

 さて70年代半ばに奥さんと離婚したポールですが、悲観的な音楽を作るのでなく逆にユーモアセンス溢れる曲に仕上げました。「恋人と別れるのなんて簡単よ。方法なんて50もあるわ」と言い寄る女性。「じゃあそいつを教えておくれよ」 と一緒に夜を過ごす主人公。思わせぶりなヴァースのストーリィもそそりますが、いろいろな男性の名前を挙げながら簡単に恋人と別れる方法を伝授するコーラス部分は、綺麗に韻を踏んでいて実にお見事です。



49. Don't You Worry 'Bout A Thing - Stevie Wonder

 70年代のスティーヴィー・ワンダーには本当に神様が乗り移っていて、大変なことになっている訳ですが。どの曲を聴いても人間が普通に生み出せるものとは思えない。そうか、奇跡ってこういうことなのか。

 この曲は名作 "INNERVISIONS" の中ではかなり明るい響きの楽曲。邦題 『くよくよするなよ』。タイトルどおり 「大丈夫、いつも僕がついているから心配するなよ」 っていう歌で、辛いことがあった時の最高の元気付けソング。パーカッションも賑やかで、ラテンカーニヴァルみたいなノリですが、微妙にコードチェンジして哀しげになる部分が織り込まれていて、なんていうかこう、禍福はあざなえる縄の如し。何の根拠もないハッピーソングじゃない。生きることの哀しさも十分認識した上で 「でも僕がついているから」 と全てを引き受けるような。何気ないポップソングの作りにすら人生の在り方を感じさせるこの時代のスティーヴィーはやっぱり神がかり。

 インコグニートのカヴァーで知った方も多いかもしれません。自分などは近年のシーラ・Eのブルーノート東京公演でライヴアンコールに演奏される、やや早いテンポのテイクが大好きです。信じられない勢いで会場全体がひとつになり、全てのお客さんが大きな声でコーラス合唱しながら手を挙げて左右に振る中で、音楽が人々の心を動かしポジティブに変えていく感動的な瞬間を本当に体験できるから。
 そうか、奇跡ってこういうことなのか。



48. My Life - Billy Joel

♪I don't need you to worry for me cause I'm alright
 I don't want you to tell me it's time to come home
 I don't care what you say anymore, this is my life
 Go ahead with your own life, and leave me alone


 このコーラスに全てが集約されています。ああだこうだ余計なこと言うなと。俺は俺の人生を生きるんだと。テメエはテメエの人生を心配しやがれと。痛快極まるNY52丁目的ソロライフ宣言。

 ビリー・ジョエルはピアノ・マンであり、吟遊詩人であり、ピュアな恋愛信奉者でもあり。歌詞の端々に彼なりの人生観が見え隠れします。でもこの歌詞は少々意外。欧米は割と個人主義が幅を利かせているかと思いきや、やっぱり他人をつかまえて説教垂れちゃったりする人もいるってことなんでしょうね。親友や家族であればこそウザいこともある。義理や血縁を断ち切ってまったく独立した「個人」として生きたい、ゼロクリアしたいって思うこともありますよね。でも実はそんなことできやしない。ビリーもそれは良く分かってるのです。ブリッジではきっちりフォロー。"♪I still belong, don't get me wrong / And you can speak your mind / But not on my time" ってね。

 自分の人生を他人に支配されそうになったら、この曲の元気なピアノを思い出してしっかり距離をとろう。それは決して罰当たりなことじゃないはずだよ。



47. Rock With You - Michael Jackson

 ああもう。マジで何時間でも浸っていられる至福のグルーヴ。マイケルは "OFF THE WALL" まで、と言い切る人たちの気持ちも実は良ーく分かるのです。極限まで洗練された70年代後期ディスコサウンドが、ここにある。

 歌詞はディスコでの他愛もない口説きソングなのですが、自信に満ちたキャラ的な歌詞の割にはマイケルの歌いっぷりが甘ったるくて。そのアンバランスさも魅力なのかも。この曲含め、アルバム中でもひときわ完成度の高い3曲のダンサーを提供しているのは元 Heatwave のロッド・テンパートン。このタイプの曲を書かせると本当に天才っすね。もちろんまとめあげたプロデューサーのクインシー・ジョーンズのお仕事ぶりも。全ての音が一切の過不足なくぴたりとはまり込んだ、音のジグソーパズルの完成品を聴いてるみたい。

 クインシーは後に自身のリーダー作 "Q'S JOOK JOINT" で、ヘヴィDをフィーチャーしたこの曲をブランディに歌わせます。他にUKの D-Influence のカヴァーもありました。もちろん悪い出来じゃないし、みんなこの曲好きなんだなあと思うけれど。やっぱり若き日のマイケルの輝きにはかなわないっすよねー。



46. The Living Years - Mike & The Mechanics

 やや印象が薄いかもしれませんが、立派な全米#1ヒット。ご存知ジェネシスのギター/ベース、マイク・ラザフォードのソロプロジェクトです。リードヴォーカリストはいぶし銀のポール・キャラック。またの名を英国の川谷拓三。静かなリズムギターの導入部から淡々としたヴァースが始まり、次第にゴスペルっぽい壮大なコーラスに展開する作りは、それほど珍しいものでもありません。ただ、この曲はありがちなラヴソングではなかった。3代に渡る親子関係の心の葛藤と和解を描いて、世代間の対話を促す楽曲です。

 父親の期待の押しつけに反抗してほとんど会話をしなかった主人公。結局父の死に目にも立ち会えなかった彼に、時が経ってようやく状況が見えてきます。これはいつの時代にも繰り返されてきたことだと。お互い虚心坦懐に目と目を合わせてしっかり話せば、世代を超えて必ず理解し合えるものだと。時が流れ、主人公は自分が授かった子供が流す涙に亡き父親の存在を感じます。そして痛切に思うのです。生きている間 (in the living years) にもっとしっかり話し合えば良かったと。マイク自身のパーソナルな体験が基になっているらしい。

 細かいことですが、曲名には定冠詞 The が付いているのに、収録アルバムのタイトルはただの "LIVING YEARS"。日常生活では何の役にも立ちませんが、プログレ者と闘う時にはこれくらいの豆知識は身につけておくと良いよ。



45. The Boss - Diana Ross

 この曲の良さを認識したのは結構遅くて、96年だったかな。トニ・ブラクストンの妹3人が結成した The Braxtons がカヴァーしたテイクでハマりました。泣く子も黙る Masters At Work 制作。流麗なストリングスが舞い弾力的な生リズムセクションが跳ねる、そりゃもうオニ気持ちいいグルーヴで。ある意味オリジナルを凌ぐ泣きっぷり。

 もちろんこのオリジナルもディスコ時代後期を十分に踏まえたトラック。クラブで十分通用するお洒落さはあります。モータウンの看板娘として可愛い路線を順調に歩んできた彼女が、レーベルからの離脱も視野に入れつつ彼女自身が 「ボス」 であることを世に知らしめた力作。作者はアシュフォード&シンプソン。自らの "Solid" のヒットでも知られるおしどりR&Bデュオ/ソングライターチームです。ダイアナには名曲 "Ain't No Mountain High Enough" 他多数のヒット曲を提供。どれも好きで選ぶのには相当苦労しました。敢えてこの曲を選んだ理由は。

 …ずばりアートワークでしょう(笑)。ノーブラ、太ももチラ、わき&二の腕全開と、いっぺんに多くのフェティッシュに訴えようとしたばかりに、あまりにも無理のある構図。心なしかダイアナの表情も強張ってるよ。過ぎたるは及ばざるが如し、これ重要な教訓。



44. Sweet Love - Anita Baker

 「クワイエット・ストーム」 という術語がありました。やや過去形。R&Bの中でもメロウでロマンティックな旋律を持つ、ソフト&スムースでアダルト向きの音楽。80年代に市場を席巻したジャンルです。中でも 「女王」 の座を欲しいままにしたのが、かつて Chapter 8 というグループで歌っていたアニタ・ベイカー。

 この曲の印象は強烈でした。とにかく声が熟成されている。「オトナ」 なのです。堂々と落ちついていて、でも少し翳りがあって。人生の深みを伝え、癒しを感じさせる声。そんな彼女の魅力を最大限に引き出す楽曲、上下に大きくうねる起伏に富んだメロディラインも素晴らしい。あくまで正統派のR&Bを基調にしながら、そこはかとなく漂うジャズ・フレイヴァーに見事ノックアウトされたものです。

 80年代後半以降、ヒップホップの台頭と共にクワイエット・ストームはアダルト・コンテンポラリーの小さな枠に追いやられ、クロスオーバーヒットさせることが難しくなりました。アニタはと言えば、この後数枚のアルバムをリリースした後はあまり表舞台に出て来なくなりました。現実生活では心から愛してくれるご主人と可愛い子供に恵まれ、幸せな人生を送っているようです。Sweet Love に包まれて。ある意味賢すぎる選択。流石に女王は一味違うね。



43. Rise - Herb Alpert

 若い世代には The Notorious B.I.G. の "Hypnotize" のサンプリングネタとして知られているのかもしれません。古い世代にはキリンシーグラムのウイスキー、ロバートブラウンのCMソングとして有名でしょう。僕は9歳か10歳でお酒などもちろん一適も飲んだことがない頃ですが、ハーブ・アルパートの曲と広川太一郎さんの渋いナレーションによる都会的でカッコいいCMは強く印象に残っています。

 ハーブ・アルパートはご存知A&Mレコードの創始者、「A」の方にあたるトランペット奏者です。洋楽初心者に見られる誤表記として 「ハープ・アルバート」 はあまりにも有名。また、洋楽を聴かない人であってもオールナイト・ニッポンのオープニングテーマに使われた "Bittersweet Samba" の軽快なトランペットはきっと一度は聞いたことがあるはず。ある意味最も日本でポピュラーな洋楽かもしれないです。

 初期はティファナ・ブラスというバックバンドを率いてラテン風味溢れるトラックを制作していた彼ですが、80年前後にはご多分に漏れずフュージョン/クロスオーバー的お洒落路線に舵を切りました。結果は大成功、この曲はインストとしては珍しい全米#1ヒットに。大きな波に揺られるようなゆったりとしたトランペットのメロディ。ぐっと低音で刻む印象的なベースライン。決して音数は多くないのに、オトナのダンディズムを強烈に漂わせる曲なのです。もちろん夜中にロバートブラウンのグラスを傾けつつ聴くのが正解。



42. Kiss From A Rose - Seal

 5拍子や7拍子ばかりが変拍子じゃない。最小単位の奇数拍子はワルツ即ち3拍子。自分はどうも3拍子(倍数も含む)の楽曲に弱い傾向があるみたいで、割と無条件で好きになっちゃいます。中でもこの曲は別格。もともと94年にリリースされた2ndアルバムに収録されていて、当初はシングルカットもされませんでしたが自分にとっては最初から 「これしかない!」 という曲でした。翌年に映画 "BATMAN FOREVER" に使われて大ヒットした時には大喜びしたものです。

 シールの持ち味は深みのあるハスキーなヴォーカル。その声質を熟知しているシンガー/ソングライターであればこそ、本人が歌う時に最強の力を発揮する楽曲。もちろん制作は1st以来の名コンビとなるトレヴァー・ホーン、本人がベースも弾いてます。上下に大きく動きながらドラマティックに展開する美しい旋律と、二重三重に重ねられたシールのヴォーカルの素晴らしいテクスチャーにただ酔い痴れるばかり。アコースティックギターやピアノを核に、重厚なストリングスや木管楽器をも配した壮大な編曲。それを貫くのが3拍子のリズムなのです。

 95年全米1位、年間4位の大ヒット。同年度のグラミー賞最優秀レコード、最優秀楽曲、最優秀ポップ男性ヴォーカルなど主要部門を総なめに。特に最優秀レコード部門の受賞は、バックトラック録音メンバーであるウェンディ&リサの古いファンとしても嬉しい出来事でした。



41. It's Love - King's X

 これほど肯定的な愛の讃歌があるだろうか。聴く度に、あまりにも力強いそのポジティヴさに圧倒されてしまいます。出典アルバムのタイトルからして 「信念、希望、愛」。これは玄人受けするアメリカのロックトリオ、King's X の決して多くないエアプレイヒットのひとつです。

 このバンドの特徴は、ドラム、ベース、ギターというシンプルな構成ながら強烈に重厚なアンサンブルと極めて美しい3声のハーモニーを聞かせてくれることでしょう。テクニカルなリズムパターンや力強いギターソロを織り込みながら、決して小難しくならずシンプルであり続けること。なかなか難しいことですよね。ギタリストのタイ・テイバーが書き自らリードをとるこの曲は、リラックスしたムードとどこまでも伸びやかに広がるコーラスに身を任せたいナンバー。

♪It's love that holds it all together
 i just had to let you know
 That its love thats holding back the weather
 And the same will let it go


 正直いって、何も説明していないに等しい歌詞だと思います。だが愛を、愛の力を語るのに論理的な説明なんて必要なんだろうか。そんなことないでしょう。愛が持つ強烈な力、全てを貫くその存在に気づいた瞬間、ただそれを君に伝えるためだけにこの曲を歌いたくなった。そんな切迫した気持ちを伝える歌の方が僕はずっと信用できるのです。


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