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(笑)。それでは結果的に、ということなのかもしれませんが、『スカイラーキング』はアンディがトッドに押さえ込まれたことによって、XTCの作品の中でも特にあなたの色が強く出たアルバムではないかと僕は考えているのですが、あなた自身はどう思いますか?

Colin:そうなのかもね。確かに僕の曲が多く収録されているし。でもプロデューサーとしてのトッドは非常にプロフェッショナルな人物だから、内容重視で曲を選んでいったんだと思う。だから僕個人を贔屓してああいう結果になったわけじゃないはずだよ。まず知ってもらいたいのは、彼が収録曲を選んだのは、僕らが実際に顔を合わせる前だったということ。初顔合わせの前に、僕とアンディのデモをアメリカにいる彼のところに送って、トッドはその中から曲を選んでいったんだ。その後すぐにトッドから『アルバムの収録曲の順番を決めたから』っていう電話を貰ったんだ。それってまだデモの状態だよ。そこからすでに収録曲を決めたばかりでなく曲順まで決めたって言うんだ。そして『君達がこっちに来た時は、サイド1のトラック1から録り始めるから』ってね。アルバム全体がそういう感じに進められていった。それまではそんなやり方でレコーディングしたことなかったから驚いたよ。普通だったら曲をいっぱい作ったあとにベストな曲を選んでいくもんだけど、彼の場合は最初からコンセプトがあったみたいなんだよね。そういう意味で僕は彼の次の行動を読むことが出来たから、それほど口論にはならなかったんだ。彼にはアルバムにとって何がベストか心の底から分かっていたんだろうから。

『スカイラーキング』はたぶんあなたが一番好きなアルバムの1つじゃないかと思うのですが。

Colin:うん、今でも好きだね。だけど、その理由は僕の曲が多く収録されているからじゃなくて……もちろんそれも理由のひとつではあるけれども、最も重要なのは、あのアルバムのサウンドが本当に好きだってことなんだ。今の僕達のアルバムは、高音域のレンジがすごく広い。ティッティッティッって感じでさ。反対に昔ながらのオールドファッションなレコード、例えばビートルズやバート・バカラックのレコードなんかを聴くと、高音のレンジっていうのはそれほど広くなくて、もっと凝縮された感じなんだ。それで、僕はそういうサウンドが好きなんだよね。うん、僕は『スカイラーキング』のレコーディング方法が今でも気に入ってるんだ。トッドがあのアルバムのエンジニアをやったんだけど、かなりオールドファッションなスタイルで、僕らの他の作品とは全く違うサウンドに仕上がっているよね。あのサウンドが好きなんだなあ。

なるほど。ところで、あなたは1回だけザ・カーネルという名義でソロ・シングルを出していますが、そういう風にXTCを離れて活動しようと考えることは今はもうないのでしょうか? ソロ・アルバムを出してみたいと思うようなことは?

Colin:僕がXTC以外にやりたいって思ってるのは、ミュージカルか何かとのコラボレーションをすることで、ソロ・アルバムを出して『これが僕のソロだ』と宣言したいって欲求は全くないね。さっきも言ったように、ある意味で今もXTCというブランド名から僕のソロを出しているような状況だから。今でも自分の思い通りに曲を作っているし。もちろんアンディの手助けだってあるけど、彼の仕事で気に入らない部分があればそれは彼に直接言うようにしてる。だから僕自身のソロ・アルバムを作ろうっていう欲望はないんだよね。もしソロになろうと思ったら、あらゆるプレッシャーを一身に受けなきゃいけないっていうデメリットもあるし。例えばレコード会社のリリース時期に関する規制やらを1人で受けて立たなきゃならなくなる。僕はそういうプレッシャーは受けたくないね。今の僕のポジションの利点っていうのは、アンディがXTCを象徴する多くの曲を書く中で、僕は自由なスピリットでソングライティングできるっていう点なんだ。

そうですか。アンディはこれまで多くのメンバーを辞めさせてきたり、プロデューサーとも揉めてきた人ですけど、あなたとの間には全くトラブルとかはないんでしょうか? 今でも頭に来るようなことはないですか?

Colin:アーティストとして彼がやる事に対して文句をつけた事は一度もないよ。もし自分の思うように表現したかったら、何があっても自分の思うように表現するしか方法はないからね。XTCの素晴らしいところは、僕たちそれぞれが自分らしい表現が出来るっていう点なんだ。つまりXTCはアンディと僕の両方にとって最高の器なのさ。アンディが爆発したり激怒するのは、他の誰かが彼のやる事に横から口を挟む時なんだ。そうなると彼も爆発して不機嫌になるのさ。他の人間に口出しされるのがすごく嫌いな人なんだ。僕はいつも人とは仲良くやろうと努力していて、他の人みたく彼に口出しすることはないんだ。なんでか知らないけど、彼ってなんか好意の表現方法が間違ってる感じがあるよね(笑)。僕は人とぶつかることがないから解らないけど、きっと人は彼を見ると衝突したくなっちゃうんじゃないの? きっとアンディの性格がそうさせるんだろうけど……う〜ん、僕にはよく解らないねぇ。きっと彼はもっと自分を変えてかなきゃならないのかもね。

もう絶対に変わらないと思いますけどね(笑)。で、つまりあなたはXTCにいることで彼から負担を受けることはほとんどなくて、むしろ居心地がいい事の方が多いってわけですね?

Colin:うん、お互いに好意を持ってるし、同じようなユーモアのセンスがあるからね。それに他の人と仕事するのも楽しいけど、XTCっていうのは理解あるオーディエンスが応援してくれてるから、その点では本当に素晴らしいポジションにいると思ってる。僕の曲を受け入れてくれるオーディエンスがいるっていうのは素晴らしいことだよ。だからわざわざソロになる必要はないんだ。ソロになってせっかくの素晴らしいファンを失うのは惜しすぎるよ。僕はXTCというブランドを持ったソロ・アーティストなんだ。XTCという名前はブランド名にすぎない。さっきも言ったように僕らは同じユーモアのセンスを持っているし、音楽的な趣味も似ている。同じ町の同じエリアで育ったから共通点が多いんだ。同じ町出身で同じ言葉を喋って……僕らには共通点が本当に多いんだよ。もちろんそれぞれ違う個人だけど、2人の間には何か大きな共通項があるんだよ。

わかりました。もちろん僕もあなた方2人がずっと一緒に活動していってくれることを願っています。では最後の質問なんですけど、XTCはアンディのステージ恐怖症のおかげで、もう長いことライヴをやっていません。で、あなたとしてはXTCとして再びライヴをやりたいという気持ちはないんでしょうか?

Colin:う〜ん、それについてはちょっと話していいかな? アンディがツアーをやらないって決めたのが1982年……今から15年前のことなんだけど、その時彼は、『僕はもうツアーはやりたくない』って宣言して、ステージやら飛行機やらといったツアーにまつわるあらゆる事が彼を悩ますんだって言っていた。で、それに僕も賛同してステージでライヴをやるのを辞めたんだ。それまでライヴは絶対不可欠なものだと思ってやってたんだけど、実のところ僕もそれほど楽しんでいなかったんだよ。シャイな人間にとって、オーディエンスに話しかけるって事は考えるだけで恐怖でね。それって、学校にいた時に教壇に立ってクラス全員の前で発表しなきゃならないのと全く同じ感覚なんだ。同じような恥ずかしさがある。ベースを弾いてる時は、ギターの背後に隠れてるような状態だからいいんだけど。それにベースを弾くっていう目的があってそこにいるわけで、自分への注目を求めてるわけではないからね。でも、とにかく僕自身もライヴを心から楽しんだことってないんだよ。僕にとっては常にトラウマだったし、そういう状況ではアンディに前面に立って頑張ってもらいたいって思いでいっぱいだった。当時は僕達4人ともギグに対してトラウマを持っていたから『ツアーをしない』っていう決定は、もしアンディが言い出さなかったとしても、他の3人の内の誰かが言い出していたんじゃないかな。ただアンディはバンドのスポークスマンで、オーディエンスとのトークを全面的に任されていたし、常にショウビズ的なエンターテイナーでいなきゃならなかったから、他の3人よりその思いが強かったんだと思う。ライヴでは誰もが多少なりともショウビジネス的な態度を取らないといけないからね。僕達はそれに見合わないメンバーばかりで、全然ショウビズ向きじゃなかったんだ。そういう意味でライヴをやらなくてよくなって、もう本当に肩の荷が降りたって感じ。まあ、将来的にはわからないけどね……バンドにとってツアーはやっぱり必要不可欠だという意見もわかるんだ。でも町から町へと渡り歩くのは嫌だし、僕はどっちみちスタジオの方が好きだしね(笑)。

じゃあ、やっぱりXTCはもう2度とライヴをやる可能性はない?

Colin:今の状態が心地良いからねぇ……あまり考えられないなぁ(笑)。

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