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スリー・マイル・パイロットの時点で既に、いわゆるパンクとは違う音を鳴らしていたわけですが、やっぱりあなたたち自身、ハードコア・パンク・シーンの一部ではあるけれどもちょっと浮いている、みたいな意識は当時から強かったのでしょうか?

Zach:うん、そもそも自分たちがパンクだとは、まったく考えてなかったと思うよ。メンタリティ的な部分では確かにパンクに近い考え方をしてたけど、でも自分たちが作りたかったのは、もっとメロディックで壮大でダイナミックな曲だったからね。実際スリー・マイル・パイロットは、すごくエクスペリメンタルなバンドだった。

パンク・シーンの中で音楽的にもっと広がったものをやりたいという気持ちは、どういったところから出てきたのでしょう。

Zach:単純に流れでそうなった、って感じかな。自分たちに一番しっくりくるサウンドに、自然と引きつけられていったんだ。

ちなみに、スリー・マイル・パイロットで活動していた90年代には、いわゆるグランジ/オルタナティヴ・ムーヴメントというのがあり、あなたがたもゲフィンと契約して苦い経験を味わったわけですが……。

Zach:あははは(苦笑)。

そういった経験も含めて、90年代オルタナティヴ・ムーヴメントというものを、今ではどのように考えていますか?

Zach:グランジに関して言うと、個人的にああいう音楽が好きになったことって、まったくないんだ。でも、ニルヴァーナみたいなバンドが、すべてのキッズにあらゆる可能性をもたらしたのは確かで、たとえば今スプーンみたいなやつらの曲がラジオでかかるのも、ニルヴァーナがいたおかげだよ。そういう意味では、グランジはいろんな可能性の扉を開いたと思う。ただ、俺が聴きたいと思うタイプの音楽ではないってだけでね。俺たちがゲフィンと契約したのも、結局のところはそこが原因ではあったのは間違いないし。どのレーベルも突如「次のニルヴァーナを探せ」ってアメリカ中の街をスカウトして回って、その結果サンディエゴで見つかったのが、たまたまロケット・フロム・ザ・クリプトとスリー・マイル・パイロットだったわけ。俺たちはかなり風変わりなバンドだったけど、人気があったからゲフィンも契約しようとしたんだ。ところが実際に契約してから「待ってくれよ。俺たちラジオ向けのバンドになるつもりなんてないぜ」って感じになってさ……本当の自分たちとは程遠いバンドに、させられそうになったんだ。ゲフィンと契約したことで、結局スリー・マイル・パイロットは終わってしまった。でもその後それぞれブラック・ハート、ピンバックと経てきて、今はスリー・マイル・パイロットの新譜を作るのをすごく楽しみにしてるよ。この来日公演の後で家に帰ったらすぐ取りかかるつもりさ。

そちらも楽しみです。で、ピンバックを結成したわけですが、最初にロブに会った時の話を聞かせてください。初対面の印象はどんな感じでした?

Zach:アハハハハ(笑)、そうだな、あいつは面白いやつで……ロブは、実は俺たちのネイバーフッド・ウォッチとか、色んなパンク・バンドのライヴの常連だったらしいんだ。俺は覚えてないんだけど、あいつによると俺が15くらいのときに、あるファンジン向けに俺にインタヴューしたことがあるんだって。あいつも15歳とかで、今でもその雑誌を持ってるようだから、すごく見てみたいんだけど。とにかく初対面はその時で、ちゃんと友達として知り合ったのはヘヴィ・ヴェジタブルズを通してなんだ。ロブが凄いのは、たくさんの曲をアッという間に書けちゃうところ。「あ、いいの思いついた」って、パパッと書いてしまうんだ。最高にいい思いつきとは言えないような時もあるけど、それでも流れに身を任せてサクっと曲を書いちゃうところが、あいつの才能なんだ。俺なんかはすぐ「これでいいかな……イマイチかな」って悩んじゃう方だけどね。とにかく、色んな面を持ってる人間で、あいつのキャラクターを説明するのはほとんど不可能だよ(笑)。

なるほど。では、ちょうどソングライティングの話が出たので、ピンバックでのソングライティングのプロセスはどのようなものなのか、もう少し詳しく教えてください。

Zach:曲によりけりだけど、最近では、お互いに作ってきたものを見せ合う感じが多いね。たとえば俺がパートの大半を作ってきて、ただギターに関してはロブが自分で作って、歌もかぶせるだろうから、わざとギター・パートは手をつけてなかったりとか……そんな感じで、相手が自分の好きなようにできる余地を、あえて残しておくんだよ。あるいはみんなで集まって、その場で即興的に曲全体を書き上げてしまう場合もある。いちばん楽しいのはそういう時かな。やっぱり強制された感じが全然なくて、すごく楽で自然だからね。

歌詞は後からつけることが多いんですか?

Zach:うん、ほとんどがそうだね。でも、例えばこのアルバムの“Walters”の歌詞なんかは、80年代に自宅の裏庭でローンチェアを何台もつなぎ合わせて、その周りに気象観測用の気球を何個もつけて、ローンチェアに乗って空に飛び立った男の実話なんだ。そいつは、エアガンを持ってて、気球をひとつずつ撃ってゆっくり地上に降りてきたんだけど、それで有名になって……で、何が言いたいかというと、ロブは以前からこの男のことを歌にしたいと思ってたらしくて、ずっと頭の片隅にあったその思いに、この曲の音楽がなぜか弾みをつけたらしいんだよ。それであの歌詞を、まだインストだったこの曲にくっつけたんだ。つまり、普段は歌詞を後から考えるんだけど、“Walters”はその例外に最も近いケースで、歌詞のアイディアは前から暖めていたものの、どの曲にくっつければいいかわかんなかった、っていうパターンだったんだ。

歌詞に合わせて曲を書いた、というのとは少し違いますね。

Zach:まあね。ただそれにピッタリくる音楽が、なかなか見つからなかった、ということなんだよ。

ただ、最新作には『Autumn Of The Seraphs』というタイトルがついてますが、それは前作の『Summer In Abbadon』と対になっているんですよね。ということは、このアルバム・タイトルが先にあって、ある程度は、それをベースにしながら曲や歌詞が作られていったということはないのでしょうか。

Zach:いや、そういうことはなかったよ。でも結果的にはタイトルにテーマ性を持たせることができて、テーマを完結させられたのはよかったと思ってる。曲が完成した時点では、どれも今とは違う、バラバラなワーキング・タイトルがついていたんだ。たとえば“Barns”は“Traffic Light”だった。その後アルバム・タイトルが決まると、アートワークから何からすべての辻褄が合ってきて、そこで「なるほど、『Summer In Abbadon』と関連性を持ったアルバムになりそうだな」ということが分かってきたんだよ。つまり“運よく”連動させることができた、ってこと(笑)。

じゃあ、偶然の産物だったんですね。

Zach:そう、別に計画してやったことじゃないんだ。

わかりました。さて、あなたたちはいつもホーム・レコーディングという形を採っていますが、ピンバックにとって自力でレコーディングをするということは、どれだけ重要な意味を持っているのでしょうか。

Zach:すごく重要だよ。ピンバックを始めた時に考えたのが……さっきのスリー・マイル・パイロットとゲフィンの話に戻るんだけど、あの時の契約で15万ドルを手にしたし、素敵な家で暮らして立派なスタジオでレコーディングできるような生活を目の前にしたわけだけど、ピンバックを結成した頃の俺は、金を湯水のように使うそういう生活にほとほとウンザリして、レコードも全部自分で手作りしたいと思ってたんだ。その方がまず安上がりだし、あと時代的にもちょうど、PCがあれば自分でレコーディングできる時代にさしかかってたからね。すっかり心を奪われたよ――「ベースをこいつに繋ぐだけで、自分でレコーディングできるのか!?」ってね。まだクオリティはそんなに高くなかったけど、独力で、自分のペースでレコーディングできる自由が手に入ったんだ。セルフ・レコーディングは、確かにピンバックというバンドのあり方の、重要な部分を占めてる。俺たちはいつも“なあ、これからこのパートをレコーディングしようぜ”って軽いノリで集まって、その後は各自が家に宿題を持って帰るって感じでやってるんだけど、ちゃんとしたレコーディング・スタジオだったら、曲を作ったりいじったりなんだかんだしながら、何ヵ月もスタジオにこもる羽目になるだろうし……それに……俺ってコントロール・フリークだからさ、エヘヘヘ(笑)。

(笑)。

Zach:セルフ・プロデュースだと、ミキシングから何から何まで100%自分でコントロールできるだろ? アルバムを出すごとに、セルフ・レコーディングの腕も少しずつ上がってきてると思うよ。機材も良いものを少しずつ買い足してきたし、今やセルフ・レコーディングの虜と言ってもいいくらいさ。ピンバックにとって、なくてはならないものだね。


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