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ここ10年間くらいのハードディスク・レコーディング技術の目覚しい進化は、あなたたちの音楽にどのような影響をもたらしましたか?

Zach:いい面と悪い面の両方があるね。レコーディングがあまりにも簡単になったのは、ある意味で良くないことだと思う(苦笑)。そのアイディアが気に入ったかどうかも決まらないうちに、何でもかんでも手当たり次第にぶち込んじゃうと、後ですさまじい量のアイディアをふるいにかけなきゃならなくなって、便利どころかさらに厄介な状況が生じるからね。音楽をプレイするだけでよければ「うん、これは気に入った」、「これはイマイチだな」と徐々に決めていきながら曲を完成させて、それからレコーディングというふうに持っていけるけど、PCに何でもかんでも絶えずブチ込んでいくというのは、あまり良いやり方とは言えないんじゃないかな――アイディアの集め過ぎで終わっちゃう、っていう(笑)。でもその一方で、曲のアレンジに関してはものすごく役に立つし、実際あまりにも簡単すぎて罪悪感を覚えるくらいさ――ひとつのアイディアをインプットして、また後で別のアイディアをインプットして、そうやって集まった断片をぐるぐる動かすうちに曲が出来てしまうからね。もしテープ・マシンで同じことをやろうとすると、テープを切ったり貼ったりそれこそ一生かかってしまうわけで。だからコンピュータも一長一短で、たとえば外の世界から疎外されてしまいがちになるのは、あまりいいことじゃないと思うな――バンドで一ヵ所に集まって、曲について全員が納得するまでとことん話し合う仲間意識みたいなものと、無縁になってしまいがちというか。でもデジタル・レコーディングになると、別に全員が集まらなくてもその場にひとりいれば十分だし、他のメンバーにはネット経由でファイルを送ればOKだし……。

(笑)。

Zach:昔ながらの“バンド”っていう概念が、崩壊してしまうように思う。だからこそ、スリー・マイル・パイロットでまたレコーディングができるのが楽しみでしょうがないんだよ。その時は必ず全員で部屋に集合するつもりさ。

スリー・マイル・パイロットの新作は、どんなものになりそうですか?

Zach:すでに何曲かレコーディングしたけど、大部分はアメリカに戻ってからになるよ。希望としては、今年中にレコーディングを終えて、来年初めにタッチ・アンド・ゴーから出したいと思ってる。みんなすごくエキサイトしてるんだ。全員が親友同士だしね。この10年間はそれぞれ違うことをやってきたわけだけど、20歳の頃やってたことが今またやれるかどうか、早く確かめてみたくてしょうがないんだ。

シカゴの名門インディ・レーベル=タッチ・アンド・ゴーとやっていて良いと思う面は、具体的にはどんなところでしょう? 不満な点とかは全くないですか?

Zach:あったら言いたいよ、っていうくらい、不満はないんだよね(笑)。最も良い点はコミュニケートしやすいことで、やりたいと思ったことを相手に伝えると、必ず実現してもらえるんだ(笑)。ゲフィンじゃ自分の意見なんて一切通らなかったし、実は小規模レーベルでもそれは同じで、ゲフィン以前にいたカーゴ・レコードなんかもう“悲惨”の一言だった(苦笑)。組織として成り立ってなかったんだよ。でもタッチ・アンド・ゴーは、そういう意味ですごくユニークなレーベルだし、そんなレーベルに所属できてとてもラッキーだと思ってる。

わかりました。では最後に、ピンバックというバンド名についてなんですが、ジョン・カーペンター監督の『ダーク・スター』という映画の主人公から取ったんですよね。

Zach:そうだよ。ロブは色んな映画のDVDをコレクションしまくってるんだけど、そんな中で『ダーク・スター』のことを噂に聞いて、それで観て大ファンになったんだ。『エイリアン』のスタッフ(※ダン・オバノン)がアマチュア時代に関わった映画なんだけど、俺たちもともと『エイリアン』や『エイリアン2』みたいなSF映画の大ファンでさ。で、そろそろバンド名を決めようって頃に、ロブが「お前もこの映画観てみろよ」って……君は『ダーク・スター』観たことある?

はい、もちろんジョン・カーペンターやダン・オバノンのこともよく知っていて、あなたもSF好きなのかと思いまして。

Zach:えーっと、まあ、そうだよ(照笑)。あの映画のいいところ、そしてピンバックのメンタリティと通じ合っているところは、すごい低予算で作られてるところなんだ。確かあれって、そもそも大学の映画学科の卒業制作で作った映画だったと思うんだけど、実際に映画を観てても、宇宙にいるはずなのに履いてる靴がテニス・シューズだったり(笑)、宇宙船も見た目にすごくヘンだったりして、低予算でやってるのがよくわかる。だけど、全部自分たちで作ってるんだよね。つまりDIYムーヴィーってこと。で、その映画の主人公の名がピンバック軍曹だったんだけど、バンドを始めた頃の俺たちのメンタリティ、つまりDIYでローファイっていうのにピッタリな感じがして、すごくしっくりきたから「よし、こいつをバンド名にしよう」って決めたんだ。

いい話ですねえ。では、小説でも映画でも何でもいいんですが、あなたにとってのベストSF作品を挙げてもらえますか?

Zach:えーっと(笑)、SF小説ならラリイ・ニーヴンの『リングワールド』かな。巨大なリングの中に惑星があるっていう話さ。あと映画では、もちろん『スター・ウォーズ』の第1作目は最高だね――公開された時、同じ年代の子どもたちはみんな仰天したもの(笑)。

確かに。ちなみに2作目以降のエピソードは?

Zach:後のはゴミだね(笑)。

(爆笑)。

Zach:その他には……難しいなあ……あ、もちろん『ブレードランナー』も大好きだよ。そういえば昨日の夜、車の中から東京の街を眺めて「『ブレードランナー』を思い出すなあ」って考えてたところさ。ネオンの光とか、まるで『ブレードランナー』の世界に入り込んだ気分だった。


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